改訂新版 世界大百科事典 「キヌゲネズミ」の意味・わかりやすい解説
キヌゲネズミ (絹毛鼠)
Cricetulus triton
齧歯(げつし)目ネズミ科の哺乳類。外観はマウス(ハツカネズミ)に似るが,尾が短く,ほお袋をもち,系統的にはハムスターに近いノネズミの1種。アメリカのキヌゲネズミ亜科の多様な種と旧世界のハムスター類とを系統的につなぐ種として注目される。中国東北部,朝鮮半島,ウスリーに分布。体長18~25cm,尾長7~10cm。体色は背側が暗褐色,腹側が白みの強い灰色。谷筋のナラやハシバミの林に深いトンネルを掘って巣とし単独でくらす。昼夜のべつなく活動し,主食は種子で,とくに豆類と雑穀類を好み,ほお袋に詰めては巣に運んで大量に貯蔵する。秋に気温が低下し始めると活動が鈍り,巣穴で眠ることが多くなり,ときどき起きては貯蔵した種子を食べて冬を過ごす。しかし,3月の初めには活動を再開し,雄は雌の巣穴を求めて走り回り,約10日間雌とともに過ごす。繁殖期は5月の中ごろまで続き,雌は1産5~6子を生む。子は約2ヵ月で親と同じ大きさに成長する。
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報