日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハムスター」の意味・わかりやすい解説
ハムスター
はむすたー
hamster
[学] Mesocricetus auratus
哺乳(ほにゅう)綱齧歯(げっし)目キヌゲネズミ科の動物。正しくはゴールデンハムスターgolden hamsterまたはシリアンハムスターSyrian hamsterとよぶ。シリア、カフカスなどに分布している。1930年にパレスチナの動物学者アハロニAharoniがシリアのアレッポで発見した。このとき持ち帰った1腹8匹のうち、雄1匹、雌2匹から繁殖した子孫が世界中に広がり、飼育されるようになった。しかし、古代アッシリアとアナトリア(小アジア)でもハムスターを飼いならしていたという記録がある。現在では、実験動物として狂犬病、ジステンパー、日本脳炎などの研究に広く用いられ、また、ペットとしても飼育されている。頭胴長12.5~15センチメートル、尾長1.7~2.2センチメートル、体重130~180グラム。頬袋(ほおぶくろ)がある。雑食性で、貯食習性が著しく、冬眠する。妊娠期間は10~14日、1産8~10子、1年に5~6回も子を産む。生まれた子は11週で性成熟に達する。乳頭は7~8対。イギリスでは逃げ出したものが野生化して、農作物に被害が出ているという。実験動物として使用されているハムスター類には、このほかにユーロピアンハムスターCricetus cricetusやチャイニーズハムスターCricetulus barabensis griseusなどがある。
なお、ハムスターの語は広義にはキヌゲネズミ科キヌゲネズミ亜科Cricetinaeの動物を総称することもある。この亜科にはヨーロッパからアジアにかけて、5属15種ほどが知られている。
[宮尾嶽雄]