キーシン(読み)きーしん(その他表記)Evgeny Kissin

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キーシン」の意味・わかりやすい解説

キーシン
きーしん
Evgeny Kissin
(1971― )

ロシアのピアニストモスクワに生まれる。2歳ころよりラジオやレコードで聴いた曲をピアノで弾く。6歳でモスクワのグネーシン音楽アカデミーに入学、アンナ・P・カントールAnna P. Kantorに師事。7歳でベートーベンソナタモーツァルト協奏曲を弾き、早熟な才能を発揮する。10歳でウリヤノフスク交響楽団とモーツァルトの『ピアノ協奏曲20番』を共演、ステージ・デビュー、1983年ソロ・リサイタル・デビュー。翌1984年モスクワ音楽院大ホールで、ドミトリー・キタエンコDmitriy Kitajenko(1940― )指揮モスクワ・フィルハーモニーとの共演で、ショパンの『ピアノ協奏曲第1番』『同第2番』を演奏し、話題となる。またこのライブ録音が発売され、国際的な注目をあびた。

 1985年旧東ベルリン、ブダペストで国外で初めての演奏会を行い、翌1986年ベオグラードで演奏。また同年初めての日本ツアーも行い、ウラジーミル・スピバコフVladimir Spivakov(1944― )指揮のモスクワ・ビルトーゾ室内管弦楽団と共演、全プログラム・ショパンによるリサイタルも行う。1987年ベルリン芸術週間に出演、西ヨーロッパ・デビューを飾った。

 1988年ドホナーニ指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(現、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団)と共演。同年ワレリー・ゲルギエフValery Gergiev(1953― )指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団と共演し、ロンドン・デビュー。ラフマニノフの『ピアノ協奏曲第2番』を演奏。また同曲をBMGクラシックスに初レコーディング。またスピバコフ指揮モスクワ・ビルトーゾとともに、ヨーロッパ・ツアーを行い、ウィーンハイドンショスタコビチの『ピアノ協奏曲第1番』、パリでモーツァルトの『ピアノ協奏曲第12番』などをレコーディングする。また同年ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の大晦日(おおみそか)のジルベスターコンサートに出演、カラヤン指揮のチャイコフスキーのピアノ協奏曲を演奏し、全世界に放送される。1989年ザルツブルク・イースター音楽祭でもカラヤン&ベルリン・フィルと共演。同年ミュンヘン、ルツェルンザルツブルク音楽祭でデビュー。

 1990年デビッド・アサートンDavid Atherton(1941― )指揮BBC交響楽団のプロムナード・コンサートに初出演、チャイコフスキーのピアノ協奏曲を演奏する。同年ズービン・メータ指揮ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団とショパンのピアノ協奏曲2曲を共演し、北アメリカ・デビュー。同年カーネギー・ホール100周年シリーズでソロ・リサイタルを行い、絶賛される。このリサイタルはライブ録音されている。

 1991年小沢征爾(せいじ)指揮ボストン交響楽団と共演、モーツァルトの『ピアノ協奏曲第27番』でタングルウッド音楽祭デビュー。同年クラウディオ・アッバード指揮ベルリン・フィルのジルベスターコンサートに再出演、ベートーベン『合唱幻想曲』を演奏する。1992年にはシカゴ交響楽団、フィラデルフィア管弦楽団と共演、カーネギー・ホールでのコンサートも行う。また同年サルバトーレ・アッカルドの代役として、カルロ・マリア・ジュリーニ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会に出演、シューマンのピアノ協奏曲を演奏しライブ録音された。翌1993年には、ボストン交響楽団とラフマニノフ『ピアノ協奏曲第3番』を共演、アメリカ各地でもリサイタル開催、カーネギー・ホールではオール・ショパン・リサイタルを行う。また同年アッバード指揮ベルリン・フィルと共演、プロコフィエフの『ピアノ協奏曲第1番』『同第3番』を録音。1994年にはザルツブルク音楽祭で、オール・ショパン・プログラムによるソロ・リサイタル・デビュー。

 1995年カーネギー・ホールのシーズン・オープニングで、小沢指揮ボストン交響楽団とチャイコフスキーのピアノ協奏曲を共演。同年『ミュージカル・アメリカ』Musical America誌の器楽賞、またロシア共和国の最高の文化賞の一つ「凱旋賞」を史上最年少で受賞。1996年アメリカ・ツアー、カーネギー・ホールでリサイタルを行い、ダニエル・バレンボイム指揮シカゴ交響楽団とブラームスの『ピアノ協奏曲第1番』を共演。

 1997年にはピアニストとして初めてBBC主催のプロムナード・コンサートに招かれ、2000年には同開幕コンサートで演奏する。2001年にはニューヨークのマンハッタン音楽大学から名誉音楽博士号が授与された。

[小沼純一]

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