スイス連邦を構成するカントン(州),およびその州都名。州人口35万9110(2006)。スイス中央フィーアワルトシュテッテ湖Vierwaldstätter See北西岸,ロイスReuss川流出部に発達した都市で,人口5万7890(2006)。9世紀前半ムールバハ修道院の所領内市場として発展し,1180年ころ都市となった。当初は内陸スイスとの交易市場であったが,ザンクト・ゴットハルト峠越えの交通が発達すると急速に重要な都市となった。ムールバハ修道院の財政破綻により1291年ハプスブルク家に売却された。ハプスブルク家はルツェルンに関税徴収所を設け,都市の自治権も抑圧した。そのため反ハプスブルクの気運が高まり,ウーリなど原初3邦と1332年同盟し,86年ゼンパハの戦に勝利して完全に自立した。他方,周辺農村を支配下に収めて都市国家を形成し,後のカントン領域を決定した。宗教改革時代にはカトリックにとどまり,スイスの反宗教改革運動の中心となった。現在,都市近郊には繊維・金属工業がおこり,カントン全体には酪農地帯が広がっているが,都市の主産業は観光業である。ロイス川右岸沿いに中世の面影をとどめる旧市街が広がり,17世紀の旧市庁舎,ルネサンス風噴水等が見られるほか,ロイス川に斜めにかかるカッペル木橋,山の手には部分的に城壁も残されている。旧市街をはずれた所に,スイス人傭兵の勇敢さをたたえるライオン記念碑,ロイス氷河跡を保存する氷河公園などもある。また,アルプスの連山と湖の眺望に恵まれたリギ山,ピラトゥス山等,アルプス観光の拠点でもある。
執筆者:森田 安一
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スイスのルツェルン州の州都で、中部スイスの中心都市。人口5万7374(2001)。フィアワルトシュテッター湖の西端、ロイス川の流出点にあり、アルプス連峰を展望できる観光・保養都市。8世紀のベネディクト派の僧院が町の起源で、13世紀にサン・ゴタルド峠を通ってイタリアとライン川流域を結ぶ通商路が開かれて発展が始まった。ロイス川に架かる屋根付き木造のカペル橋(1300ころ建造)はヨーロッパ最古の現存木橋として知られ、右岸の旧市街には市庁舎、教会など16~17世紀建造の建物が多く残る。町の急速な発展はゴタルド街道開通の1830年以降と、ゴタルド鉄道開通の1882年以降にみられる。ホテルの数は60を超え、ベッド数は5600を数える。市の就業人口の7割はサービス業という観光の町で、湖尻(こじり)北岸には遊歩公園があり、周りのリギ山やピラトゥス山などには登山鉄道が通じ、眺望を楽しむことができる。
[前島郁雄]
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