改訂新版 世界大百科事典 「クッパー星細胞」の意味・わかりやすい解説
クッパー星細胞 (クッパーほしさいぼう)
Kupffer stellate cells
Kupffersche Sternzellen[ドイツ]
1876年,ベルリン大学教授であったクッパーKarl von Kupffer(1829-1902)は,肝臓に塩化金による染色を施し,これによって染まる星型の細胞を見いだし,星細胞Sternzellenと命名した。ついで1898年,彼は墨汁を注射した動物の肝臓の洞様毛細血管の内皮の位置にあって異物(墨汁)をとりこむ細胞を星細胞と発表した。以後,肝臓の洞様毛細血管壁において異物をたべこむ細胞をクッパー星細胞というならわしになっている。ところが,1960年代に鈴木清と和気健二郎は,最初にクッパーの発表した細胞は伊東俊夫が見いだした脂肪摂取細胞,すなわち,伊東細胞(内皮と肝細胞の間に位置し,脂肪あるいはビタミンAをとりこみ貯蔵する細胞)にあたることを明らかにした。しかし現在では,肝臓の洞様毛細血管内皮の位置にあり,異物をたべこむ細胞をクッパー星細胞と呼んでいる。以前にはクッパー星細胞が毛細血管内皮と同じもの,あるいは内皮に由来するものとの考え方が強かったが,現在では血液の中の単球に由来するとの考え方が強い。肝臓の血流に入った細菌,異物,古くなった赤血球などをとりこみ処理する。クッパー星細胞にとりこまれた赤血球のヘモグロビンは肝細胞に送られ胆汁色素の材料となる。クッパー星細胞の表面は不規則で,多くの突起や微絨毛をもち異物をとらえるのに便利である。細胞の中にはリソソームが多くたべこんだ異物と融合し分解する。
執筆者:藤田 尚男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報