改訂新版 世界大百科事典 「クニッゲ」の意味・わかりやすい解説
クニッゲ
Adolph Freiherr von Knigge
生没年:1752-96
ドイツの作家,社会評論家。風刺的で教育的な作風をもち,啓蒙主義の精神にもとづいて市民社会とその文化の確立を促し,フランス革命の理念を擁護した。ハノーファー近郊の貴族の出身。ゲッティンゲン大学で法律を学び,カッセルの宮内官に任ぜられたが,昇進も早いかわりに失脚も早く,ドイツ各地で宮仕えをしたのち,借財を負った領地の経営に失敗,官吏の職についてブレーメンで死去。その間,《わが生涯の小説》(1781-83),《ブラウンシュワイクへの旅》(1792)など多数の作品を出版したが,最も著名なのは《人間の交際について》(1788,第3版1790)である。家族,友人,主従,主客,敵,おえらがた,酔いどれ,動物など,あらゆる階層,職業,状況にわたって,つきあいの際にとるべき態度を論じた書であり,19世紀を通じて広く流布し,また,小市民的な日常と結びついて,〈クニッゲ〉は作法の規範の書を意味する普通名詞ともなった。
執筆者:辻 瑆
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報