クロノポテンショメトリー

化学辞典 第2版 の解説

クロノポテンショメトリー
クロノポテンショメトリー
chronopotentiometry

指示電極を通して一定電流を強制的に流し,そのときの指示電極電位の時間的変化を追跡し,得られた電位-時間曲線を解析する電気分析法.通常,多量の支持電解質微量の被電解物質を含む電解液を用い,電極,電解液とも静止した条件で測定を行う.電解時間が長くなると自然対流などの影響が出るため,普通,30~40 s 以下で測定を終えるのが望ましい.一定電流密度で指示電極を荷電していく場合を考えると,電極電位は急激に卑の方向に移行するが,溶液中に被還元物質が存在する場合には,電極電位がその物質の還元がはじまる電位に達するとともに,電解還元反応が起こり,電極-溶液界面を通って電流が流れるために,電位変化は緩やかになる.さらに,荷電が続けられると,界面での被還元物質の濃度が減少し,それにつれて電極電位はしだいに卑にずれ,ついにその界面濃度がゼロに近づくとともに,電極電位はまた急激に卑に移行し,新しい電解反応(たとえば,支持電解質のカチオン溶媒の還元)がはじまるまで移行し続ける.電解をはじめてから電位が急激に変化するまでの時間(これは被電解物質の界面濃度がゼロになるまでの時間に等しい)は,遷移時間とよばれ,直流ポーラログラフ法における限界電流と同様に,被電解物質の電極-溶液界面への補給速度によって規定される.この補給が拡散のみによって行われる場合には,遷移時間τは,次式によって与えられる.

ここで,nは電解反応に含まれる電子数,Fファラデー定数Iは外部より加えられる電流密度であり,c°,Dはそれぞれ被電解物質の濃度および拡散係数である.上式よりわかるように,遷移時間の平方根は濃度に比例する.これがクロノポテンショメトリーの定量分析の基礎である.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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