改訂新版 世界大百科事典 「グリマルディ洞窟」の意味・わかりやすい解説
グリマルディ洞窟 (グリマルディどうくつ)
Grottes de Grimaldi
地中海に面したイタリア・フランス国境のイタリア側に位置する洞窟群。20ほどの旧石器時代遺跡があって,18世紀以来知られ,今日もなお調査が続けられている。プランス洞窟ではアシュール文化とムスティエ文化が確認されている。前者は原人の寛骨を伴い,原人が完全に直立していたことを示す貴重な証拠を提供している。アンファン洞窟では,ムスティエ文化,オーリニャック文化,グラベット文化,グリマルディ文化が連続している。老年女性と若年男性が一緒に屈葬されている,いわゆるグリマルディ人は,このオーリニャック文化層に発見された。グリマルディ文化は小型背付石器を主体とする石器文化で,グラベット文化に由来する。以後マドレーヌ文化に並行して旧石器時代の終りまで続くが,おそらく地中海地方に存在したロマネリ文化とされるべきものであろう。カビヨン洞窟,モチ岩陰,バルマ・グランデ遺跡などにおいても,同じような連続層位が認められる。これら洞窟群の上層部からは,グリマルディ人のほかに,10体ほどの人骨が出土しているが,これらはマントン人と呼ばれる。バルマ・グランデ遺跡では,凍石製の“ビーナス”像が知られていた。さらに最近,カビヨン洞窟の岩肌に馬の線刻画が発見され,フランコ・カンタブリア美術との関連が指摘されている。それらはビーナス像と同じく,2万5000年前ころのものと考えられる。
執筆者:山中 一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報