アシュール文化(読み)あしゅーるぶんか(英語表記)Acheul

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アシュール文化」の意味・わかりやすい解説

アシュール文化
あしゅーるぶんか
Acheul

アフリカヨーロッパ、西アジアを中心に広がる前期石器時代の文化。北フランスのアミアン郊外の、ソンム川段丘上にあるサン・アシュールを標準遺跡とする。ソンム川の段丘は19世紀以来、地質学的にも考古学的にも注目を集めてきた所だが、1883年にフランスのモルティエによってムスティエ文化に先だつ旧石器時代最初の文化段階として評価された。地域差はあるが、万能石器といわれるハンド・アックス(握槌(にぎりづち)・握斧(あくふ))を共通してもつ。代表的な石器としてはほかにクリーバー(鉈(なた)状石器)がある。

 100万年以前から6万年前ぐらいまで続くアシュール文化は、大きく前、後期に分かれる。前期には、石で打撃を加える石器製作技術しかもたなかったが、後期には骨、木などの柔らかいハンマーも用いるようになる。技術的には長足の進歩を遂げ、ルバロワ技法とよばれる特徴的できわめて体系的な石器製作技法も生み出される。

[山下秀樹]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アシュール文化」の意味・わかりやすい解説

アシュール文化
アシュールぶんか
Acheul culture

アフリカ,ヨーロッパ,西アジアに広くみられる前期旧石器文化。従来,ヨーロッパではアブビル文化に続いて,アフリカではシェール文化に続いて現れるとされていたが,今日では,握斧特色とする前期旧石器文化をすべてアシュール文化と呼び,それを前期,後期に分ける傾向が強くなってきている。アシュール文化の発展の様相はアフリカでよくたどられており,ヨーロッパではアシュール文化の各期の間に断絶がみられる。このことから,アシュール文化の故地をアフリカに求める意見が強い。握斧と剥片石器がおもな石器であるが,後期にはソフトハンマーを用いた形の整った握斧が出現する。この種の握斧は東アジアではまったくみられない。標準遺跡はフランスのソンム河畔のサンタシュール。

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