ムスティエ文化(読み)ムスティエぶんか(英語表記)Moustier

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ムスティエ文化」の意味・わかりやすい解説

ムスティエ文化
ムスティエぶんか
Mousterian culture

中期旧石器時代にヨーロッパに栄えた文化。標準遺跡はフランス,ドルドーニュ地方のル・ムスティエ。おもな利器は,粗末な骨器のほかに,剥片を使った刺突具,種々の用途にあてられたと考えられる細長いナイフなどで,この文化のにない手はネアンデルタール人である。その文化層から彼らが火を使用し,死者埋葬を行なっていたことがわかる。彼らは種々の技術を身につけ,従来よりもはるかに生活領域を拡大し,北方地域へも移り住むようになった。地中海を取巻く,西アジア,北アフリカや,中央アジア,シベリア西部にも類似様相を示す文化が存在している。東ヨーロッパのものは東ムスティエ文化,西アジアのものはレバンタイン・ムスティエ文化,中央アジアからシベリア西部のものはシベリア・ムスティエ文化,北アフリカのものはルバロア・ムスティエ文化と呼ばれ,それぞれ地方色をもつが,基本的な様相は共通するものが多い。現生人類起源と関連するため,多くの議論が行われている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ムスティエ文化」の意味・わかりやすい解説

ムスティエ文化
むすてぃえぶんか
Moustier

西ヨーロッパを中心にみられる中期旧石器文化。中期旧石器時代には類似の様相をみせる文化が、広義の環地中海地域にはみられる。北アフリカおよび西アジアのルバロワゾ・ムスティエ文化、中央および東ヨーロッパの東ムスティエ文化である。これらはいずれも剥片(はくへん)につくられた尖頭(せんとう)器(ポイント)、横形削器(ラクロワール、サイド・スクレーパー)が特徴的な文化であり、類似したものである。ルバロワ技法の有無、特徴とする石器の形態比率などによって、いくつかのグループに分けられる。標準遺跡はフランス南部の「先史時代の主都」ともよばれるレゼジー・ド・タヤック近郊にある同名の岩陰。この遺跡は19世紀に発掘調査が行われている。この文化はネアンデルタール人が残したものと考えられている。各地でそれぞれの地域なりに後期旧石器文化に移行することが確認されつつある。

藤本 強]

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