改訂新版 世界大百科事典 「ケイ酸肥料」の意味・わかりやすい解説
ケイ(珪)酸肥料 (けいさんひりょう)
silicate fertilizer
ケイ酸を有効成分とする肥料で,可溶性ケイ酸を20%以上,アルカリ分25~30%以上を含んでいる。ケイ酸肥料は鉄をはじめ各種の金属を製錬するときにできるスラグ(鉱滓(こうさい))を粉砕してつくられる。混入する重金属の最大含有限度としてニッケル0.4%,クロム4.0%,チタン1.5%が規定されている。現在ケイ酸肥料の原料となっているのは,製銑鉱滓,普通鋼鉱滓,ステンレス鉱滓,フェロマンガン鉱滓,シリコマンガン鉱滓,フェロニッケル鉱滓,ニッケル鉱滓,フェロクロム鉱滓,マグネシウム鉱滓,ケイ化石灰鉱滓,製リン残滓,ケイ灰石,軽量気泡コンクリートの各粉末である。これらのうち製リン残滓はリンを還元気化した残滓である。またケイ灰石は唯一の天然資源である。ケイ酸肥料は通常ケイ酸石灰あるいはケイカルと呼ばれているが,主成分としてのケイ酸やカルシウムのほかに,マグネシウム,マンガン,鉄などの成分を含み,それらの量は鉱滓の種類により異なっている。ケイ酸肥料とはいわないが,ケイ酸を含む肥料として,溶成リン肥,焼成リン肥,副産石灰,副産塩基性苦土肥料,鉱滓マンガン肥料などがある。
肥効
ケイ酸肥料は本来水稲に対するケイ酸の補給を目的として製造された。水稲はその茎葉部のケイ酸含有量が10%以上にもおよび,麦類の2%,ハクサイの0.2%などと比較してもはるかに多くのケイ酸を吸収している。十分量のケイ酸を吸収できない場合は生育,収量が低下する。ケイ酸の役割としては,葉のケイ質化による耐虫性,耐病性の増大,表皮のクチクラ層の下に形成されるケイ酸ゲル層の作用による葉面蒸散水量の調節,葉の粗剛化による受光体制の改善による光合成能の増大などがあげられる。ケイ酸肥料はアルカリ性の肥料であり,畑の酸性改良に対しても効果がある。
執筆者:熊沢 喜久雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報