日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケナガイタチ」の意味・わかりやすい解説
ケナガイタチ
けながいたち
polecat
ferret
[学] Mustela putorius
哺乳(ほにゅう)綱食肉目イタチ科の動物。ポールキャットともいう。ヨーロッパから近東に分布する。中近東のステップケナガイタチM. eversmanniは別種で、この種と区別するときにはケナガイタチをヨーロッパケナガイタチとよぶ。体長38~46センチメートル、尾長13~19センチメートル。毛色は黒褐色から黄褐色で、顔は白っぽく、目の周囲は黒い。餌(えさ)がある所なら森林、草原、耕作地、人家の周囲にもすみ、尾根裏に営巣することもある。主食はネズミ類であるが、小鳥やヘビ、果実も食べる。カエルも食べるが、好きではない。5、6月に交尾、6週間の妊娠期間で、2~10子を産む。敵に対して肛門腺(こうもんせん)から悪臭の分泌物を出す。この分泌物は縄張り宣言の役割ももつ。
本種は、少なくとも古代ローマ時代以降、ネズミ退治のために飼育されてきた。こうして成立したやや小形の種類、とくに白色系のものをフェレットM. p. furoとよんでいる。このフェレットはニュージーランドにも移入されて、やはりネズミ退治にある程度の効果をあげている。また、なれたフェレットはウサギ狩りにも使われたほか、インフルエンザウイルスに対する感受性が高いため、最近では実験動物としても飼育されている。ケナガイタチの毛皮はフィッチfitchとよばれ、とくに黒色系のものが価値が高い。
[朝日 稔]