ケベック協定(読み)ケベックきょうてい(英語表記)Québec Agreement

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ケベック協定」の意味・わかりやすい解説

ケベック協定
ケベックきょうてい
Québec Agreement

1943年8月 19日にカナダケベックでアメリカの F.ルーズベルト大統領とイギリスの W.チャーチル首相が署名した,原子爆弾計画に関する両国の取決め。両国間に対立点もあったが,「この大戦 (第2次世界大戦) 中にできるだけ早く原爆を完成する必要がある」という趣旨から,双方譲歩して合意に達した。その結果,ワシントンに両国の統合政策委員会が設けられた。ただし,同委員会はアメリカ陸軍工兵隊のマンハッタン計画管理には干渉しないことが定められ,次の4項目についても両国の合意が成立した。これは 54年になって,チャーチルが初めて明らかにしたものである。 (1) 両国はこのエージェンシー (原爆) を,相互間では,決して使用しない。 (2) 相互の同意なしに,それを第三者に対して使用しない。 (3) チューブ・アロイズ (原爆計画) に関するどんな情報をも,相互の同意による場合を除き,第三者に知らせない。 (4) 戦争遂行努力の賢明な分業の結果,アメリカの大きな生産負担を考え,イギリス政府は,戦後の工業的または商業的性質のどんな利益も,アメリカ大統領がイギリス首相に示す条件に基づいて取扱われることを承認する。イギリス首相は,アメリカ大統領が公平,正当で,世界の繁栄に合致すると考えるもののほか,原子力の工業的および商業的分野へのどんな関心をも放棄する。このように原則的にはアメリカ側の譲歩がみられる一方,「マンハッタン管区」の主体性確保などではイギリス側が譲歩した。ケベック協定のあと,イギリスの原子力科学者らが渡米し,マンハッタン計画に協力した。

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