日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゲラシモフ」の意味・わかりやすい解説
ゲラシモフ(Innokentiy Petrovich Gerasimov)
げらしもふ
Иннокентий Петрович Герасимов/Innokentiy Petrovich Gerasimov
(1905―1985)
ソ連の土壌学者。ドクチャーエフ学派の土壌学を継承発達させ、主著の『土壌学・土壌地理学の基礎』(グラゾフスカヤMaria Alfredovna Glazovskaya(1912―2016)と共著)は英語訳および日本語訳が出版されている。ペドロジーの学理のもとに土壌の生成分類と地理的分布に関心を払い、ロシア・アジア各地域の土壌に深い知見をもっていた。日本で開催された太平洋学術会議(1957)、国際地理学会議(1980)などの際に来日、東アジアや日本の土壌についての講演を行った。ソ連地理学会長、国際地理学連合(IGU:International Geographical Union)副会長を歴任した。
[浅海重夫]
『I・P・ゲラーシモフ、M・A・グラーゾフスカヤ著、菅野一郎他訳『土壌地理学の基礎』上下(1963、1964・築地書館)』
ゲラシモフ(Aleksandr Mihaylovich Gerasimov)
げらしもふ
Александр Михайлович Герасимов/Aleksandr Mihaylovich Gerasimov
(1881―1963)
ロシアの画家。モスクワの絵画・彫刻・建築学校でアルヒーポフAbram Arkhipov(1862―1930)とコロービンのもとで学んだ。革命前は主として風景画を描いていたが、革命後はソビエト共産党の要人たちの肖像画を描き、旧ソ連画壇の大御所として君臨した。『演壇のレーニン』『クレムリンのスターリンとウォロシーロフ』『第16回党大会のスターリン』などが有名であるが、「雪どけ」(冷戦緩和)後はいわゆる社会主義リアリズムの悪(あ)しき典型と批判する向きもある。もっとも『雨のあと』(1935)など革命後の風景画には別の趣(おもむき)がみられる。
[木村 浩]