日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドクチャーエフ」の意味・わかりやすい解説
ドクチャーエフ
どくちゃーえふ
Василий Васильевич Докучаев/Vasiliy Vasil'evich Dokuchaev
(1846―1903)
ロシアの土壌学者。スモレンスク地方に生まれ、ペテルブルグ大学で地質学を学んだのち、母校の教授を務めた。ユーラシア内陸草原地帯の土壌(チェルノゼム)の腐植形成過程の研究から、土壌生成論を進め、近代土壌学の祖といわれた。土壌は、主として気候と植生因子のもとに、もとの岩石から長年月を経て変質生成したもので、ABC層に分化し、その断面特徴によって類型化されると考え、ポドゾル、チェルノゼム、塩類土などの土壌型を分類した。土壌を単に鉱物組成や化学成分による肥沃(ひよく)度で分類するのではなく、このように成因論から分ける土壌学を、ドクチャーエフ以来ペドロジーpedologyとよぶ。各土壌型が気候、植生の違いに従って帯状分布すること(土壌帯論)も彼によって示された。ドクチャーエフ学派による研究はシビルツェフNikolai Mikhailovich Sibirtsev(1860―1900)、グリンカらの後継者を得てその後も発展し、のちにドクチャーエフ土壌研究所の設立をみた。主著に『The Place and Role of Present-day Pedology in Science and Life(現代の土壌学の科学と人間活動における立場と役割)』(1899)がある。
[浅海重夫]