コシオリエビ

改訂新版 世界大百科事典 「コシオリエビ」の意味・わかりやすい解説

コシオリエビ (腰折蝦)

コシオリエビGalatheidaeに属する甲殻類総称で,エビ類とカニ類の中間の異尾類(ヤドカリ類)の仲間である。外形はむしろエビ類に近く,腹部を折り曲げているのでこの名があるが,基本となる属名Galatheaからそのままガラテアとも呼ばれる。体は背腹に平らで,多くの横筋がある。額角は大きな三角形のことが多いが,とげ状のこともある。長大なはさみ脚と3対の歩脚に続いて鰓室さいしつ)清掃用の小さな脚がある。甲長5mmほどから5cmくらいの大きさで,大型で多産するものは食用とされている。低潮帯から水深500mほどの海底にすみ,何かにしがみついていることが多い。とらえようとすると後ずさりして逃げるが,この習性近縁のカニダマシ類に似ている。日本産のコシオリエビ類は約55種で,もっとも多いのはトウヨウコシオリエビG.orientalisである。甲長5mmほどの小型種で,緑褐色から赤褐色まで色の変異著しい
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コシオリエビ」の意味・わかりやすい解説

コシオリエビ
こしおりえび / 腰折蝦
squat lobster

節足動物門甲殻綱十脚(じっきゃく)目コシオリエビ科Galatheidaeのエビ類の総称。日本産は60種。分類学的には長尾類(エビ類)と短尾類(カニ類)の中間に位置し、異尾類(ヤドカリ類)に含まれるが、腹部を強く折り曲げているのでこの名があり、外形的にはエビ類に似る。基本となる属名Galatheaをそのままガラテアとよぶこともある。頭胸甲は背腹に扁平(へんぺい)で、横筋(よこすじ)や小さな棘(とげ)があることが多い。額角(がっかく)は一般に三角形あるいは棘状。長大なはさみ脚(あし)に続いて3対の歩脚(ほきゃく)、さらに鰓室(さいしつ)清掃用の小さな1対の脚がある。甲長5ミリメートルから大きいものでもせいぜい5センチメートルほどである。もっとも普通にみられるのは小形で色彩変異の著しいトウヨウコシオリエビG. orientalisである。日本近海の水深100~450メートルにすむオオコシオリエビCervimunida princepsはほとんど食用にされていないが、チリ沖のケルビムダ・ジョニC. johniは多量に漁獲されている。コシオリエビ類は後ずさりして逃げる習性がある。

武田正倫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コシオリエビ」の意味・わかりやすい解説

コシオリエビ
squat lobster

軟甲綱十脚目コシオリエビ科 Galatheidaeとしてまとめられる種類の総称。頭胸部,腹部とも背腹に扁平だが,基本的な体形はエビに似ており,腹部を強く折り曲げている。甲長 0.5~5cm。甲面には多くの横じわ,小棘があり,額角が棘状あるいは歯状に突出する。長い鋏脚に続いて 3対の歩脚と鰓室内清掃用の小さな脚が 1対ある。干潮線付近から深海まですみ,浅海から深海にかけての底生動物のなかで重要な存在である。日本産は約 60種。最も多いのはトウヨウコシオリエビ Galathea orientalis で,甲長約 5mm,色彩の変化に富む。水深 80~500mにはオオコシオリエビ Cervimunida princeps が比較的多産する。なおコシオリエビ科は,基本となる属名 Galathea からガラテア類と呼ばれることもある。(→甲殻類十脚類節足動物軟甲類

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