日本大百科全書(ニッポニカ) 「コルチ器」の意味・わかりやすい解説
コルチ器
こるちき
内耳の蝸牛(かぎゅう)内にある感覚上皮で、きわめて鋭敏な器官。解剖学名ではラセン器という。コルチの名は、イタリアの解剖学者Marchese Alfonso Corti(1822―76)が発見したことによる。側頭骨岩様部内にある内耳は、複雑な形の骨性迷路と、その中に位置するほぼ同型の膜性迷路からなっているが、膜性迷路が巻き貝のように螺旋(らせん)状に巻き上がっているのが蝸牛である。蝸牛の内部は上下の前庭階と鼓室階、さらに両者に挟まれた蝸牛管が全長にわたって走る。蝸牛管の底をつくっているのが基底板で、コルチ器はこの上にのっている上皮性細胞群である。音波は蝸牛管内の内リンパを介してこれら上皮細胞群を刺激し、ここに分布する蝸牛神経によって脳に伝達される。
[嶋井和世]