コロミーナ(読み)ころみーな(英語表記)Beatriz Colomina

日本大百科全書(ニッポニカ) 「コロミーナ」の意味・わかりやすい解説

コロミーナ
ころみーな
Beatriz Colomina
(1952― )

スペイン生まれでアメリカで活動する建築史家、建築理論家。1976年バルセロナ建築大学で修士号を取得後、同大学で教鞭(きょうべん)をとる。1990年には同大学より博士号を授与されている。1982年、アメリカに拠点を移してコロンビア大学建築・都市・保存学部助教授就任。さらに1988年プリンストン大学建築学部に移籍し助教授に就任、「建築とビジュアル・アート」「近代建築分析と理論」などの講座を担当するかたわら、同大学院のプログラム・ディレクターも兼務する。2001年より同教授。

 実証的な近代建築研究をベースとして、都市論、ジェンダー論、ファッション論、メディア論といった先端的な言説をいち早く取り入れた手法が注目され、なかでもアドルフ・ロースル・コルビュジエの比較研究を通じて近代建築と文化的写真、広告、映像といった表象の諸制度の関係を解明した主著マスメディアとしての近代建築』Privacy and Publicity; Modern Architecture as Mass Media(1994)は1995年にAIA(アメリカ建築家協会)から「インターナショナル・ブック・アワード」を授与され、また多くの国々で翻訳されて国際的にも大きな反響をよんだ。編著書としては、独自のベンヤミン解釈を含んだ『アーキテクチャー・プロダクション』Architecture Production(1988)や建築とジェンダー論を結ぶ清新な切り口で注目された『セクシュアリティと空間』Sexuality and Space(1992)があげられ、後者もまた1993年度の「インターナショナル・ブック・アワード」を受賞している。それ以外にも、チャールズ・イームズ、フランク・O・ゲーリー、アーティストのダングレアムなどについての論考を著している。その業績はSOM財団、グレアム財団、ル・コルビュジエ財団からも表彰されており、プリンストン大学以外にもハーバード大学、エール大学、コーネル大学、MoMA(ニューヨーク近代美術館)、ニューヨークのディア・アート・センターやクーパー・ユニオンなど多くの大学や研究機関から招かれている。『アッサンブラージュAssemblage、『ダイダロス』Daidalos、『グレイ・ルーム』Grey Room誌などのアドバイザーを務めるかたわら、雑誌等での多くの原稿執筆をこなしており、また戦争と建築の関係に焦点をあてた研究も行う。

 なお、多くのポスト・モダン建築を紹介した画期的な展覧会「ディコンストラクティビスト・アーキテクチャー展」(1988、MoMA)の共同キュレーターであり、近代建築論であると同時に優れたジャック・デリダ論でもある『脱構築の建築』The Architecture of Deconstruction(1993)の著者として知られるニュージーランド出身の建築史家・建築批評家マーク・ウィグリーMark Wigley(1956― )は夫である。1997年(平成9)には夫婦揃って来日し、ル・コルビュジエ財団が主宰した公開シンポジウム「ル・コルビュジエと日本」に参加した。シンポジウムの記録はまとめられ、同タイトルで1999年に刊行されている。

[暮沢剛巳]

『ビアトリス・コロミーナ著、松畑強訳『マスメディアとしての近代建築――アドルフ・ロースとル・コルビュジエ』(1996・鹿島出版会)』『高階秀爾他編『ル・コルビュジエと日本』(1999・鹿島出版会)』『ビアトリス・コロミーナ、マーク・ウィグリー著、牧尾晴喜訳『我々は人間なのか?――デザインと人間をめぐる考古学的覚書き』(2017・ビー・エヌ・エヌ新社)』『Architecture Production(1988, Princeton Architectural Press, Princeton)』『Sexuality and Space(1992, Princeton Architectural Press, Princeton)』『Mark WigleyThe Architecture of Deconstruction; Derrida's Haunt(1993, MIT Press, Cambridge)』

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