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…かつては競奏曲とも書いた。原語のコンチェルトは動詞concertareに由来するが,この語はラテン語で〈競い合う〉,イタリア語で〈協調させる〉という意味をもち,楽曲形式としてのコンチェルトがどちらの意味から来ているかは明らかでない。むしろ,協奏曲は〈競合〉と〈協調〉という二重の契機によって成り立つと考えるべきであろう。…
…それに対してバロック音楽は,異質的・対極的なものの緊張をはらんだ結びつけによって動的・劇的表現に向かった。これは,絵画における明暗の対比やダイナミックな表現と軌を一にするもので,声楽曲の分野ではオペラやオラトリオなどの劇音楽の形式を生み,器楽曲の分野ではコンチェルト(協奏曲)やトッカータ,ファンタジア(幻想曲)のような形式の成立を促した。具体的な表現手段に目を注ぐなら,本来異質的な響きのメディアである声と楽器の結合,二重合唱における明と暗の音色的対比,独奏(唱)と合奏(唱)の機能上の対比,強と弱(ディナーミク)の音響レベルの対置,抒情的アリアと言葉に重点をおいたレチタティーボの対比,拍節感の強い部分と無拍節の部分の併置などが挙げられるが,これらの諸要素はしばしば手を携えて芸術的な効果をあげてゆくのである。…
…楽団が3~4群になることもしばしばで,同時代のローマ楽派の禁欲的な〈ア・カペラ〉様式の音楽とは対照的に,対位法的というよりは,音の塊をぶつけ合うような豊饒な響きがサン・マルコ大聖堂の丸天井にこだました。コーリ・スペッツァーティの宗教曲は,コンチェルト(協奏曲)とも呼ばれ,続くバロック時代の器楽のコンチェルト的発想の一つの母胎ともなった。 大聖堂ではまた,オルガンのトッカータやリチェルカーレ,合奏曲のソナタやカンツォーナなどが開拓され,バロック時代の器楽発展の一つの礎が築かれた。…
※「コンチェルト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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