チェコスロバキアの20世紀前半を代表する詩人。プラハのジシコフ地区の労働者の家庭に生まれる。高校卒業以前から文筆業に入り、雑誌の編集や批評に携わりながら詩人として数多くの詩集を発表した。サイフェルトの詩は1920年代初期のプロレタリア詩から、次のアバンギャルドの詩の時代を経て、ナチス・ドイツによるチェコ占領を反映した暗い詩に移り、やがて深遠な詩へと転じているが、それぞれの時代に傑作といわれる詩集がある。第1期の『涙の町』(1921)、『恋でいっぱい』(1923)、第2期の『無線電信の電波の上で』(1925)、第3期の『光を消して』(1938)、第4期の『おかあさん』(1954)などが有名で、ほかに回想録『この世のありとあらゆる美しいもの』(1982)が評判である。サイフェルトは自分の思想に忠実なため、共産党員でありながら三度党と決別しており、その三度目が1968年のワルシャワ条約機構軍のチェコ占領に対する反対で、反体制の詩人として孤高を保っていた。チェコスロバキアでもっとも愛されていた詩人の一人で国民詩人といわれ、84年にはノーベル文学賞を受賞した。
[千野栄一]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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