日本大百科全書(ニッポニカ) 「サセッタ」の意味・わかりやすい解説
サセッタ
させった
Sassetta
(1392?―1450)
15世紀イタリアのシエナ派を代表する画家の一人。本名をステファノ・ディ・ジョバンニStefano di Giovanniというが、後世サセッタの通称で知られるようになる。詳細は不明だが、おそらくシエナ生まれと考えられている。記録に残る最初の作品である羊毛組合のための祭壇画(1426)から、未完のまま残されたシエナのローマ門の壁画に至るまで、シエナ派の中心的画家として活躍した。彼の作風は、繊細で生き生きとした情感と、優雅な装飾性を特徴としており、S・マルティーニやA・ロレンツェッティに代表される14世紀のシエナ派の伝統に深く根ざしたものといえる。しかし、一面では、15世紀の前半に活躍したフィレンツェの革新的な画家の作品を研究し、より進んだ空間表現も試みている。その意味で、シエナ派絵画をゴシックからルネサンスに移行せしめた画家だといえよう。彼の制作した祭壇画は、今日シエナやコルトーナ、フィレンツェなど、各地の教会や美術館に収められている。
[石鍋真澄]