さるほどに

精選版 日本国語大辞典

さる‐ほど‐に

1. 〘 接続詞 〙
2. ① 先行の事柄に続いて、または先行の事柄と関係して、後続の事柄が起こることを示す。そうこうしているうちに。そのうちに。
   1. [初出の実例]「少納言〈略〉さいはひある人はめでたき物なりけりと思ひゐたりけり。さる程に、右大臣にておはしける人の御ひとり女(むすめ)、内裏(うち)に奉らんと思へど」(出典：落窪物語（１０Ｃ後）二)
   2. 「二人とばかりかかれて、三人とはかかれず。さる程に、少将や判官入道も出で来たり」(出典：平家物語（１３Ｃ前）三)
3. ② ( 叙事の文章の発端や冒頭において ) 先行の事柄を具体的にもたないで、ほとんど形式的に用いる語。さて。ところで。
   1. [初出の実例]「さるほどに、鬼界が島の流人共、つゆの命草葉のすゑにかかって、おしむべきとにはあらねども」(出典：平家物語（１３Ｃ前）二)
   2. 「去程に、えうらうはのうち、ひりしやの国とろやと云所に」(出典：仮名草子・伊曾保物語（1639頃）上)
4. ③ 先行の事柄の当然の結果として、後続の事柄が起こることを示す。それゆえに。それで。
   1. [初出の実例]「何晏が諸家の注の善と思て取て、此論語の注にする也。さるほとに、此書は注者一人に非ず」(出典：応永本論語抄（1420）学而第一)
5. ④ 先行の事柄を受けて感想を語り出す時に用いる。感動の気持を含む。さてもさても。
   1. [初出の実例]「さる程に三人は雑言ゆへに、あたら身をうしなひ、大事の前の用に立ずと」(出典：浮世草子・武家義理物語（1688）三)

さるほどにの補助注記

( 1 )「日葡辞書」に「Somosomo(ソモソモ)と同じように、書物の冒頭に用いて控えめに書きおこすための語で、書物の内容が新奇のものでも、初めて言い出す事柄でもないことを悟らせるもの」とある。
( 2 )同時代に「かかるほどに」が①の用法を、「さるあいだに」が①と②の用法を持っていたが、「さるほどに」は軍記物語に多く用いられ、また「さて」「かくて」などに比してやや硬い表現として、和漢混淆文で愛用されたとする見方がある。

出典　精選版 日本国語大辞典