和漢混淆文(読み)わかんこんこうぶん

百科事典マイペディア 「和漢混淆文」の意味・わかりやすい解説

和漢混淆文【わかんこんこうぶん】

日本語文語体一種漢文訓読変体漢文語彙(ごい)語法と仮名日記物語など和文の語彙語法とが混用されて成り立った文体。《平家物語》など軍記物語が代表的。一般に漢字仮名交じりで書かれる。平安末より盛行明治時代まで行われた。
→関連項目海道記漢文軍記今昔物語集太平記都賀庭鐘東関紀行英草紙保元物語読本

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「和漢混淆文」の解説

和漢混淆文
わかんこんこうぶん

和文体と漢文訓読体が混ざった文体をいう。概念定義は従来かならずしも厳密ではなく,研究者の間でも差異がある。通常,典型的な和漢混淆文としては,鎌倉時代以降の「平家物語」「保元物語」「太平記」などの軍記,「海道記」「方丈記」などの紀行随筆,謡曲・幸若舞(こうわかまい)の詞章などをあげることが多い。実際には漢文訓読体としての要素のなかには変体漢文的なものもみられ,また和文的要素のなかには雅語のみならず俗語的表現もみられる。和漢混淆文は江戸時代には広く行われ,実際に書かれる文章の多くの部分を占めたものと考えられる。明治期になり言文一致体の成立と流行によってようやく衰え,最近ではごく限定された場合にのみ用いられるにすぎない。

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世界大百科事典 第2版 「和漢混淆文」の意味・わかりやすい解説

わかんこんこうぶん【和漢混淆文】

日本の文語体の文章様式の一つ。和文,漢文の両方の特色を合わせた文章。漢文や漢文の読下し文や和文と対立するもの。この用語は明治初期から用いられ,《古事類苑》は,推古朝の金文,《日本霊異記》《将門記(しようもんき)》《新猿楽記》《小右記》《吾妻鏡》《江談抄》《古事談》《新勅撰和歌集序》《古今著聞集》《保元物語》《平治物語》《源平盛衰記》などを実例としてあげるが,現代の一般的な理解としては,鎌倉時代以後のものをさし,《平家物語》の冒頭〈祇園精舎〉の段などがその典型といわれる。

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世界大百科事典内の和漢混淆文の言及

【文語体】より

…文語体は,さらに多くの種類にわかれる。和文,和歌の文,宣命(せんみよう)体,漢文訓読文,和漢混淆(こんこう)文,変体漢文,普通文など。これらのうち,和文以下変体漢文までは,平安時代にすでにその形が整っており,以後現代にまで引き続き行われたものである。…

※「和漢混淆文」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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