日本の柔道とよく似た旧ソ連地域の格闘技。A・A・ハルラムピエフらによって1930年代にソ連で始められた。14メートル四方のウレタン素材等によるアマチュアレスリングマットを敷き、その中の直径10メートルの円(うち外縁1メートル幅がレッドゾーン)内で競技が行われる。柔道同様一対一の個人競技で、投げ技、固め技などのほか、首投げ、バックドロップなどレスリングの技も認められている。手足の関節を攻めることは認められているが、柔道では認められている締め技が禁止されているのが大きな違いである。成人では体重別に9階級に分かれる。服装はショートパンツ(スパッツ)に靴でレスリングと同じだが、上半身には柔道着と似た袖(そで)のついたサンボジャケットを着用している。試合時間は普通10分で、一本勝ち、技の得点1、2、4ポイントの四つがあり、試合時間内に一本がない場合はポイントの多いものが判定勝ちとなる。引分けはない。ソ連での第1回選手権大会は1939年11月にレニングラードで個人戦だけが行われている。団体戦は10年後の1949年から加えられた。旧ソ連地域の柔道選手にはサンボ出身者が多い。サンボはロシア語のサモザシチータ・ベズ・オルージャ(武器を持たない自己防衛術の意)の三つの単語の頭文字を組み合わせたものである。ソ連ではスポーツ競技以外に、軍隊や民警で戦闘技術の一つとして広く教えられていた。日本でも1965年(昭和40)に日本サンボ協会(現日本サンボ連盟)が設立され、67年リガにおける第1回国際トーナメントで団体2位の成績を収めている。
[石井恒男]
1969年、モスクワで行われたサンボ国際トーナメントで日本の岩釣兼生(いわつりかねお)が優勝している。また、1996年に東京で行われた第20回世界サンボ選手権大会で日本の武田美智子が優勝している。
[編集部]
旧ソ連各地に伝わる各種の民族格技をハルラムピエフA.A.Kharlampievが中心になって統一ルールを作った新競技。samboとは,〈武器〉〈不所持〉〈自己防衛術〉の三つのロシア語を組み合わせた造語。10m2のマット上に敷いた8m2のキャンバスの上で投げ技,固め技(抑え技,関節技)によって勝敗を競う。9階級制で競技時間は6分。レスリング用の短いパンツと柔道着に似たサンボ着,かかとのない靴を着用する。日本では絞め技のない柔道として理解されている。1938年体育スポーツ委員会がサンボという名称をつけて発足させ,翌39年には第1回全ソ連個人選手権大会が開かれた。69年に国際アマチュア・レスリング連盟の正式管理種目となり,国際的にも認知されている。日本には1965年笹原正三が中心となって日本サンボ協会(1972年日本サンボ連盟と改称)が誕生。66年には全日本選手権大会が開催された。67年の第1回国際サンボ選手権大会では,日本はソ連に次ぐ好成績を挙げ,第2回大会でも柔道の高段者が優勝するなどの活躍をしている。
→レスリング
執筆者:浅田 修司
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…それは,主として北東ブラジル,ギアナ地域,カリブ海地域にみられるアフロ・アメリカ社会が〈混血社会〉であることの反映である。つまりここでは人種間の混血現象が北アメリカと異なって日常茶飯事であり,たとえば白人と黒人との混血によってムラート,マメルコ,またインディオと黒人との混血によってサンボ,マルーンなどの混血人種が生まれている。そして文化面でも,スペインやポルトガルの文化とアフリカの文化との交流,接触,混合によって,西欧的でもなくアフリカ的でもない,新しい異質の文化が形成されることになったのである。…
…優秀白人人種と劣等人種とされた人々(先住民インディオ)の間に生まれた混血は,ムラート,メスティソなどと呼ばれた。また黒人と先住民との混血はサンボなどと呼ばれ,いずれも社会的には両者の中間に置かれ,多かれ少なかれ差別されている。 しかし,第2次世界大戦後,人種主義が否定され,ユネスコなどにより純粋種概念の無意味さが論じられると,むしろ混血は人種間あるいは民族間の同化の度合いを測る指標として利用されはじめ,国際結婚,異文化間婚姻なども推奨もされはじめた。…
…しかし,時代が下るにつれ人口も増え,社会的地位も安定し,植民地時代における平均的地位は,次のように各種の人種の中間に位置した。高いほうから列挙すると,(1)ペニンスラール(イベリア半島人=スペイン人),(2)クリオーリョ(新大陸生れの白人,クレオール),(3)メスティソ,(4)ムラート,サンボ(インディオと黒人の混血),自由身分の黒人,(5)奴隷(黒人,ユダヤ人,イスラム教徒),(6)インディオ,の順であった。時代が進むにつれ,ペニンスラールはクリオーリョに凌駕(りようが)され,19世紀初頭に諸国で起こった対スペイン独立運動は,クリオーリョを主力として推進された。…
…
[旧イギリス領アメリカとの違い]
ラテン・アメリカの名が示すように,基本的にはスペイン,ポルトガルによって代表されるラテン系ヨーロッパ文化がこの地域の文化的骨格をかたちづくっているが,コロンブス到着以前に長い歴史的展開を示した先住民文化や,16世紀以後奴隷として連れて来られたアフリカ人の文化も,それぞれの地域の文化に強烈な特色を与えている。同じくヨーロッパ人,先住民,アフリカ人によって人口構成の基礎がつくられたアメリカ合衆国の場合は,各民族集団間の隔離が特色であったのに対し,ラテン・アメリカでは,3者間に非常な血の混合が起こり,メスティソ(白人と先住民の混血),ムラート(白人と黒人の混血),サンボ(先住民と黒人の混血)などの集団が多数発生して,社会的に重要な意味をもっている点が注目される。先住民についていえば,アメリカ合衆国やカナダの狩猟民や小規模な農民社会と違い,アステカ,マヤ,インカなどの文明地帯には,安定した農村社会と密集した人口があり,また金銀などの鉱物資源が早くから発見されたため,スペイン人の征服後,彼らの労働力徴発による生産体系が急速に成立した。…
※「サンボ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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