シアン化水銀(読み)シアンカスイギン

化学辞典 第2版 「シアン化水銀」の解説

シアン化水銀
シアンカスイギン
mercury cyanide

シアン化水銀(Ⅰ)HgCNは不安定で,確実なものは得られていない.【】シアン化水銀(Ⅱ)(mercury(Ⅱ) cyanide):Hg(CN)2(252.63).酸化水銀(Ⅱ)をシアン化水素希水溶液に溶かした後,蒸発濃縮するか,Hg塩とシアン化アルカリとの反応で得られる.無色正方晶系結晶.構造はN-C-Hg-C-Nのほぼ直線状分子.Hg-C1.986 Å.Hg-N2.70 Å.∠C-Hg-C171°.密度4.00 g cm-3.加熱すると320 ℃ でHgと (CN)2 とに分解する.水,エタノール可溶.水溶液中でもHg(CN)2分子のまま存在する.AgNO3やKOHでは沈殿しないが,H2SではHgSを沈殿する.写真,医療,殺菌防腐剤などに用いられる.猛毒.[CAS 592-04-1]【】シアン化酸化水銀(mercury(Ⅱ) cyanide oxide):[Hg(CN)]2O(469.21).市販品は普通,およそ倍量のHg(CN)2で希釈されている.Hg(CN)2加水分解すると得られる.無色の斜方晶系結晶.炎を当てたり,衝撃を与えると爆発する.特殊な防腐剤として用いる.猛毒.[CAS 1335-31-5]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シアン化水銀」の意味・わかりやすい解説

シアン化水銀
しあんかすいぎん
mercury cyanide

水銀のシアン化物。一価水銀の塩の水溶液にシアン化物を加えるとシアン化水銀(Ⅰ)Hg2(CN)2が得られるが、これはただちに分解して二価水銀の塩となるので、一価水銀のシアン化物は得られていない。

 シアン化水銀(Ⅱ)Hg(CN)2は、酸化水銀(Ⅱ)HgOをシアン化水素水溶液に溶かし、蒸発濃縮すると得られる無色の柱状晶。直線型2配位の[Hg(CN)2]分子が存在し、水、エタノール(エチルアルコール)に可溶。水溶液はほとんど電離しない。猛毒である。

[中原勝儼]


シアン化水銀(データノート)
しあんかすいぎんでーたのーと

シアン化水銀(Ⅱ)
  Hg(CN)2
 式量  252.6
 融点  ―
 沸点  ―
 比重  3.996
 結晶系 正方
 溶解度 11.3g/100g(水25℃)
     10.1g/100g(エタノール19.5℃)

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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