チョウセンニンジン(読み)ちょうせんにんじん(英語表記)ginseng

翻訳|ginseng

日本大百科全書(ニッポニカ) 「チョウセンニンジン」の意味・わかりやすい解説

チョウセンニンジン
ちょうせんにんじん / 朝鮮人参
ginseng
[学] Panax ginseng C.A.Meyer
Panax schinseng Nees

ウコギ科(APG分類:ウコギ科)の多年草。沿海州、朝鮮半島、中国東北部に分布する。かつては山西省まで分布していたが、この地方はすでにとり尽くして絶滅した。植物体の高さは約60センチメートル、茎は毎年1本だけ直立または斜めに生じ、その頂に3~4個の葉を輪生する。葉は葉柄が長く、葉身は5~7個の小葉に分かれた掌状複葉をなす。外側の小葉は小さく、内側の3個の小葉は大きく(長さ4.5~15センチメートル、幅3~5.5センチメートル)、先はとがる。縁(へり)には細鋸歯(さいきょし)があり、表面の葉脈上には剛毛が散生する。夏に茎頂から細い1本の花茎を出し、その先端に14~40個の淡黄緑色の小花を散形花序につける。花弁は5個、雄しべは5個、雌しべは1個で子房下位である。果実は扁球(へんきゅう)形の核果で、径5~9ミリメートル。成熟すると鮮紅色となり、内部に半円形の核を2個もっている。

[長沢元夫 2021年11月17日]

薬用と栽培

根を人参(にんじん)と称し、中国では、紀元前から重要な薬として利用してきた。漢方では、胃の衰弱によって生じた新陳代謝機能の衰え、神経衰弱、糖尿病の口渇などの治療に用いる。日本では民間薬として火傷、出血、粘膜の炎症などに用いられるし、中国では葉、花も捨てずに利用する。野生のものは高貴薬とされ、非常に高価なため、栽培が盛んである。中国では遼寧(りょうねい)省、吉林(きつりん)省、朝鮮半島では京畿道(けいきどう)、黄海北道、錦山(きんざん)、扶余(ふよ)、江華島、豊基、日本では長野県、福島県、島根県などが主生産地となっている。栽培は日本がもっとも早く、1730年代にはすでに成功しており、江戸幕府が種子を各藩に分与する形をとったので、別名オタネニンジン(御種人参)ともよばれた。また、北アメリカで栽培しているアメリカニンジンP. quinquefolius L.の根は広東(カントン)人参と称し、良質のものとされ、チョウセンニンジンと同様に用いる。これは江戸時代の密輸入品としても有名である。

 根の形はダイコンに似て分枝性が強く、主根、支根、細根からなり、微黄白色で、その姿と太さによって商品価値が決まってくる。主根が長く、指の太さほどの支根が2~3本あるのが良質とされる。成分としては、多数のサポニン配糖体、フィトステロールエステル、精油、ビタミンB群などの存在が証明されている。

 なお、中国雲南省そのほかで栽培されているサンシチニンジン(三七人参)P. notoginseng (Burkill) F.H.Chenは田七(でんしち)ともいい、止血、鎮痛、消腫(しょうしゅ)の作用がとくに強く、刀槍(とうそう)の傷に特効のある雲南白薬の主薬として著名である。

[長沢元夫 2021年11月17日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チョウセンニンジン」の意味・わかりやすい解説

チョウセンニンジン(朝鮮人参)
チョウセンニンジン
Panax schinseng; ginseng

ウコギ科の多年草。中国,朝鮮半島に分布し,森林下に生えるが現在は薬用植物として畑で栽培される。日本でも享保年間 (1716~36) 頃から栽培されている。短い根茎が直立または斜上し,その下端から白色多肉の直根が出る。根は先端部で分枝することが多い。根茎から1本の直立する茎が伸び高さ 60cmほどになる。葉は5枚の小葉から成る掌状複葉で,茎の頂部に3~4枚が輪生する。夏に,茎の頂部から1本の花軸を出し,頂部に散形花序をなして多数の淡黄緑色5弁の小花をつける。果実は扁球形で赤色に熟する。根に数種の配糖体や脂肪酸が含まれ,神経衰弱,貧血,性欲減退などに薬効がある。普通煎液,滲出液の1~10gを1日量として飲用する。和名は産地による名で,オタネニンジンの別名もある。日本の山地にも同属の近縁種トチバニンジン (栃葉人参)があり,また北アメリカにはアメリカニンジン P. quinquefoliumがあって,どちらも根茎を本種の代用とする。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

お手玉

世界各地で古くから行われている遊戯の一つ。日本では,小豆,米,じゅず玉などを小袋に詰め,5~7個の袋を組として,これらを連続して空中に投げ上げ,落さないように両手または片手で取りさばき,投げ玉の数や継...

お手玉の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android