日本大百科全書(ニッポニカ) 「シレン石」の意味・わかりやすい解説
シレン石
しれんせき
sillénite
酸化鉱物あるいは珪(けい)酸塩鉱物の一つ。帰属として酸化鉱物を採用する理由は合成Bi3+12 Bi3+0.5 Bi5+0.5 O20という酸化物が本鉱と同構造であることによる。珪酸塩鉱物が採用される理由はケイ素(Si)の存在による。シレン石は、1944年メキシコ産のものについて、蒼鉛(そうえん)(ビスマス、Bi)の三二酸化物(Bi2O3)として報告された。スウェーデンの化学者シレンLars Gunnar Sillén(1916―1970)が1938年に合成研究したγ(ガンマ)-Bi2O3と一致することから、彼に献名された。しかし1991年(平成3)岡山県備中(びっちゅう)町(現、高梁(たかはし)市備中町)布賀(ふか)産のものについて、草地功(くさちいさお)(1942― )、逸見(へんみ)千代子(1949― )が化学式Bi12SiO20を決定し、合成物との一致も確認した。珪酸塩とみなせば、式はBi12[O16|SiO4]となり、もっともSiO2含量の少ない(~2%)珪酸塩鉱物となる。花崗(かこう)岩質ペグマタイト中、気成鉱床の酸化帯、スカルン中の方解石脈中などに産する。
[加藤 昭 2017年5月19日]