劈開(読み)へきかい

精選版 日本国語大辞典 「劈開」の意味・読み・例文・類語

へき‐かい【劈開】

〘名〙
① (━する) 裂きひらくこと。きりひらくこと。
三国伝記(1407‐46頃か)六「巨霊華山を劈開せしが盤石俄に動きて沉没して忽に失ぬ」 〔蘇軾‐同正輔表兄游白水山詩〕
② (━する) ひびがはいって割れること。
③ 鉱物、岩石などに見られる、一定の方向に割れやすい性質。〔鉱物字彙(1890)〕

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デジタル大辞泉 「劈開」の意味・読み・例文・類語

へき‐かい【×劈開】

[名](スル)
裂き開くこと。切り開くこと。
「連句の研究上に一つの新断面を―するだけの効果は」〈寅彦・連句雑俎〉
ひびが入って割れること。
結晶が、ある特定の平面に平行に割れること。また、そのように割れやすい性質。その面に垂直な方向の原子イオン分子間の結合力が弱いために起こる。

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改訂新版 世界大百科事典 「劈開」の意味・わかりやすい解説

劈開 (へきかい)
cleavage

結晶に機械的な力を加えると特定の結晶学的な面に沿って割れ,平滑な面が出現することがある。この現象をへき開といい,出現した面をへき開面と呼ぶ。これは脆性(ぜいせい)破壊であり,へき開しやすい結晶はもろい。へき開面は結晶を構成する原子の配列で規定されていて,原子密度が高い面が通常へき開面となる。結晶構造が同一である結晶間では,へき開面も同じ結晶面となる。へき開の程度には雲母や石墨方解石のように,完全で明瞭なものから,水晶やザクロ石のように,ほとんどへき開しないものまである。へき開面は結晶の成長による外形面のどれかと一致することが多い。へき開面とすべり面も同一であることが多いが,必ずしも一致しない。へき開の形成機構については転位論によるモデルがいくつか提唱されている。
執筆者:

岩石が数十μmから数cmの間隔で平行にスライス状に薄く割れやすいとき,その面および面構造をいう。泥岩や凝灰岩などの細粒岩に発達することが多い。岩石が力を受けて変形したときに形成されるといわれ,一般に層理面と斜交し,褶曲軸とほぼ平行である。したがって,ケツ岩に見られるような,堆積の過程で生じた層理面に平行な剝離面は,これに含めない。ふつう,破断へき開,スレートへき開,ちりめんじわへき開の3種に大別する。破断へき開は,間隔数mm~数cmの,ごく密に生じた節理ないし微小断層で,後2者と異なり,鉱物がこれと平行に配列することはない。均質な非変成の泥岩に見られることが多い。スレートへき開は,細粒の弱変成岩に見られるへき開で,イライトなどの微細な葉片状鉱物の平行配列からなる。力を加えられた方向(正確には最大圧縮ひずみの主軸)に直交する方向に粒子が並び直したり,新しく鉱物が成長したりして形成されると説明されている。したがって,ある程度温度と圧力の高いことが必要条件となる。ふつうのスレートでは,その中に含まれている化石や礫などがへき開面に平行に押しつぶされて扁平になっており,その形状から,へき開面に直交する方向に70%も短縮したことがわかる。この短縮に伴って,地層は激しく褶曲し,スレートへき開面を褶曲軸面とする,いわゆる剪断褶曲が形成される。ちりめんじわへき開は,低度中程度の変成岩のうち,層面片理のよく発達する岩石にみられ,細密褶曲へき開ともいう。層面片理は互いに平行な軸面をもつ波長数百μmの微褶曲を繰り返しており,ちりめんじわへき開はその軸面に平行である。層面片理を明白に切ってずらしているものから,ずらしてはいるものの片理はまだつながっているものまで,いろいろな種類がある。へき開の間隔はスレートへき開よりやや大きく100μm~数百μmある。スレートへき開と漸移することもあり,それよりもより温度圧力条件の高いところで形成されたと考えられている。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「劈開」の意味・わかりやすい解説

劈開
へきかい

固体結晶質物質において、その原子配列と直接関係するとして説明される、特定方向に沿って割れやすい性質。これを記載するには、その方向については、結晶面と同様にミラー指数を用いた表現形式で示し、発達の度合いについては、完全、明瞭(めいりょう)、良好、不完全などの用語を用いる。また、存在しない場合は単に「無」として示す。

 なお、一般の教科書では、方向の表現形式をまず方向の数で与え、その結晶学的方位を与える。したがって、たとえば岩塩の場合、通常の記述によれば「{001}(あるいは{100},{010})に完全」とのみ示されている。これは上の三つの方位が等軸晶系では同価であるため一つでよいが、実際は三方向であるので、一般的感覚からするとわかりにくい。そこで、本事典の鉱石・鉱物の解説では、混乱を防ぐため「三方向に完全」というように示している。

 ごく少数の例を除き、劈開面は結晶面としてもよく出現する。また六方晶系(または三方晶系)の鉱物では、6回(または3回)対称軸に平行な劈開面は原則として発達しないが、もし発達していれば、それは比較的単純な組成のものであるという経験則もある。劈開は、それが発達している結晶質物質については一つの固定的属性であるが、これに似た性質の裂開(れっかい)は、特定の産地や産状(人工物であれば製造方法)のものに限って出現する一見劈開様の外観をもった割れ方のことである。劈開には、石墨(せきぼく)や雲母(うんも)のように、つねに外観上に現れているものと、トパーズやダイヤモンドなどのように、見ただけでは存在の明らかでない場合とがあり、一般に前者は低硬度の物質、後者は高硬度の物質にみられる。

[加藤 昭]

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普及版 字通 「劈開」の読み・字形・画数・意味

【劈開】へきかい

きり開く。宋・軾〔正輔表兄と同(とも)に白水山に遊ぶ〕詩 峽を劈開して、雲雷走り を截破(せつぱ)して、洞と作(な)す

字通「劈」の項目を見る

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岩石学辞典 「劈開」の解説

劈開

(1) 鉱物に用いる場合は,鉱物の特定の面に沿って分かれる性質をいい,この劈開(へきかい)面は鉱物の結晶形の一つまたはそれ以上の面に平行である.(2) 岩石に用いる場合は,特徴的な頁岩の裂けやすい構造をいう.このような岩石では面に沿って容易に薄い片状に剥がれるが,この面はこの岩石の層理と成因的な関係はなく,剥げる面と層理が一致する必要はない.このような劈開(へきかい)は圧力によるものと考えられ,劈開面は加圧された方向に直角である.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「劈開」の意味・わかりやすい解説

劈開
へきかい
cleavage

鉱物結晶の内部構造上,結合力の弱い方向で剥離する性質。この剥離面を劈開面という。結晶を割ったときに,簡単な面指数で示される平滑面に平行に割れる場合,その鉱物はその面指数の方向に劈開をもつという。この場合,劈開面に垂直な方向の結晶内部の結合力が弱いことを意味する。劈開の程度 (完全,明瞭,不明瞭,不完全) および劈開面の種類は,個々の鉱物の物理的性質を反映しており,鉱物を肉眼鑑定する際の一つの要素となる。

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世界大百科事典(旧版)内の劈開の言及

【卵割】より

…多細胞動物の受精卵が行うやつぎばやの細胞分裂の過程。受精の結果として生ずる受精卵は1個の巨大細胞であり,これがひたすらDNA合成と細胞分裂を繰り返すことによって,多数の正常な大きさの細胞を生じ,個体発生の基本となる多細胞環境を短時間のうちにつくりだす。 卵の細胞質には,あらかじめ卵割期およびその後の形態形成の過程を維持するためのエネルギーや情報が大量に蓄えられており,新たな細胞質の合成は卵割期を通じてほとんど行われない。…

※「劈開」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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