珪酸塩鉱物(読み)ケイサンエンコウブツ(その他表記)silicate minerals

デジタル大辞泉 「珪酸塩鉱物」の意味・読み・例文・類語

けいさんえん‐こうぶつ〔‐クワウブツ〕【×珪酸塩鉱物】

珪酸塩の形で存在する鉱物地殻を構成する大部分造岩鉱物をなし、種類も多い。長石雲母うんも角閃石かくせんせき輝石橄欖石かんらんせきの類。

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精選版 日本国語大辞典 「珪酸塩鉱物」の意味・読み・例文・類語

けいさんえん‐こうぶつ‥クヮウブツ【珪酸塩鉱物】

  1. 〘 名詞 〙 珪酸の塩に相当する組成の物質。岩石を構成する鉱物は大部分珪酸塩である。長石、雲母、ザクロ石、輝石、角閃石など、種類はきわめて多い。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「珪酸塩鉱物」の意味・わかりやすい解説

珪酸塩鉱物
けいさんえんこうぶつ
silicate minerals

結晶構造の基本単位として、SiO4四面体(中心にケイ素をもち4個の酸素が四面体の頂点に位置する)が存在する鉱物。珪酸塩鉱物の分類はこの四面体の結合の仕方によって行われ、次の6種類に大別される。

(1)ネソ珪酸塩鉱物nesosilicates(オルト珪酸塩鉱物) 基本基として独立の四面体、SiO4を含む(ざくろ石、橄欖(かんらん)石など)。

(2)ソロ珪酸塩鉱物sorosilicates 基本基として独立の2個~4個の四面体が一つの頂点を共有したもの。たとえばSi2O7を含む(ローソン石異極鉱など)。

(3)シクロ珪酸塩鉱物cyclosilicates(環状珪酸塩鉱物) 基本基としてリング状に結合した四面体、たとえば3個のSi3O9、4個のSi4O12、6個のSi6O18などを含む(緑柱石、電気石など)。

(4)イノ珪酸塩鉱物inosilicates(鎖状珪酸塩鉱物) 四面体が一方向に伸びた鎖状の結合をしている。単鎖(輝石類、珪灰石など)、複鎖(角閃(かくせん)石類など)、三鎖、複鎖と三鎖の両方を含むものなどがある。

(5)フィロ珪酸塩鉱物phyllosilicates(層状珪酸塩鉱物) 四面体が平面的に結合したもの(雲母(うんも)類、緑泥石類など)。

(6)テクト珪酸塩鉱物tectosilicates(網状珪酸塩鉱物) 三次元的に四面体が結合したもの(長石類、沸石類など)。

 珪酸塩鉱物は、地殻を構成する重要な鉱物を含み、いろいろな地質環境のもとで生成される。現在1000種類以上が知られている。多くの珪酸塩鉱物は資源として重要な位置を占め、とくに粘土鉱物、長石類、雲母類、紅柱石、珪灰石、滑石、蛇紋石はよく使用される。またベリリウムジルコニウムハフニウムトリウムなどの元素の原料となる鉱物もある。

[松原 聰]

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改訂新版 世界大百科事典 「珪酸塩鉱物」の意味・わかりやすい解説

ケイ(珪)酸塩鉱物 (けいさんえんこうぶつ)
silicate mineral

ケイ素Siと酸素Oを主成分とする鉱物で,岩石の主要構成鉱物である。各種のケイ酸の水素原子を種々の金属原子で置き換えた化学組成を有する。ケイ酸塩鉱物は,ケイ素原子1個とそれを取り囲む酸素原子4個からなるSiO4正四面体がその構造の基本になっている。このSiO4四面体の結合の仕方によってケイ酸塩鉱物は6種類に分類される。図にこれら6種類のケイ酸塩鉱物の名称,SiO4四面体の結合様式および代表的な例を示す。

 ネソケイ酸塩nesosilicate(オルトケイ酸塩orthosilicateともいう)では,SiO4四面体は独立して存在し,酸素原子は共有されていない。これらのSiO4四面体の間にMg2⁺,Fe2⁺,Ca2⁺などの陽イオンが入り四面体を結びつけている。

 ソロケイ酸塩sorosilicateでは2個のSiO4四面体が1個の酸素原子を互いに共有して連結している。

 サイクロケイ酸塩cyclosilicate(環状ケイ酸塩ring silicateともいう)ではSiO4四面体が2個の酸素原子を互いに共有して連結し環を作っている。一つの環をつくる四面体の数は3,6,12などである。

 イノケイ酸塩inosilicate(鎖状ケイ酸塩chain silicateともいう)では,SiO4四面体が2個の酸素原子を共有して無限に連なり,一次元の長い鎖を作っている(例えば輝石)。鎖が2本互いに平行に連結しているもの(角セン石)もある。鎖と鎖との間にはCa2⁺,Mg2⁺,Fe2⁺,Al3⁺などの陽イオンが入り,鎖を互いに結びつけている。しかし,その結合力はSi-Oの結合力より弱いため,鎖と鎖との間が切れやすい。これが鎖の延長方向(c軸方向)に平行なへき開が生じやすい原因である。

 フィロケイ酸塩phyllosilicate(層状ケイ酸塩sheet silicateともいう)では,SiO4四面体が3個の酸素原子を互いに共有して無限に連なっており,二次元的な平らな層状構造を作っている。多くのフィロケイ酸塩鉱物は含水鉱物であり,SiO4の形成する層と層の間に水素原子が入り水酸基OHを作っている。また種々の陽イオンも入って層と層とを結びつけている。しかしこの結合力はSi-Oの結合力より弱いため,Si-Oよりなる層と層の間が裂けやすい。これが雲母などが薄くはがれやすい原因である。

 テクトケイ酸塩tectosilicate(網状ケイ酸塩network silicateともいう)では,SiO4四面体が4個の酸素原子すべてを互いに共有して無限に連なっており,三次元的な網状構造を作っている。ただし長石のように,SiO4のSiの一部をAlが置換しているものも多い。

 ケイ酸塩鉱物のほとんどのものは固溶体を作る。すなわち,ケイ酸塩鉱物の基本的な構造は変化せずに陽イオンどうしがその量比を連続的に変化させる。最も普通に見られるものはMg2⁺とFe2⁺が置換するものである。例えば,カンラン石はMg2SiO4とFe2SiO4との間の固溶体である。その他Na⁺とK⁺,Ca2⁺とMg2⁺とFe2⁺,Al3⁺とFe3⁺などの置換,および2種の陽イオンどうしの置換,例えばMg2⁺・Si4⁺と2Al3⁺やCa2⁺・Mg2⁺とNa⁺・Al3⁺などがある。

 ケイ酸塩鉱物は地球上のほとんどすべての岩石やそれが風化して生じた土壌,および月の岩石や隕石の主要構成鉱物である。これは太陽系に存在する元素の中でケイ素と酸素の占める割合が大きいことによる。ただしケイ酸塩鉱物は超高圧下では相転移したり,あるいは分解したりして上記のようなケイ酸塩鉱物の特徴的な構造を失い,酸化鉱物などの構造になる。したがって地球深部(マントル中部,下部)ではケイ酸塩鉱物は存在しない。
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百科事典マイペディア 「珪酸塩鉱物」の意味・わかりやすい解説

ケイ(珪)酸塩鉱物【けいさんえんこうぶつ】

ケイ酸塩の形で存在する鉱物。主要な造岩鉱物で地殻の大部分を占め,種類が多い。化学組成は一見複雑であるが,結晶構造はケイ素酸素四面体SiO4を骨格とし,その間に金属イオンを含むという共通の特徴がある。SiO4相互の結合の型によって5種に分類される。(1)独立したSiO4がケイ酸イオンをつくっているもので,オルソ(正)またはネソケイ酸塩,たとえばカンラン石。(2)2個のSiO4がOを共有してSi2O7をつくっているもの(ソロケイ酸塩),または3個,6個のSiO4がそれぞれ2個のOを共有して環をつくっているもので,リング(環状)またはシクロ(サイクロ)ケイ酸塩といい,たとえば電気石。(3)SiO4が2個のOを共有して鎖状に長く連続しているもの。チェーン(鎖状)またはイノケイ酸塩といい,たとえば輝石。(4)SiO4が3個のOを共有して平面的に無限に広がっているもので,シート(層状)またはフィロケイ酸塩といい,たとえば雲母。(5)SiO4の4個のOが全部共有されて三次元の網目状の構造をもつもの。フレームワーク(網状)またはテクトケイ酸塩という。この場合は金属イオンを含みながら立体構造をとるために,四面体のケイ素の一部がAlに置きかわる。たとえば長石など。ケイ酸だけからなる石英などはケイ酸鉱物といわれ,構造の型からみれば5番目に属する。
→関連項目角セン(閃)石カスミ(霞)石キン(菫)青石ケイ(珪)線石紅柱石ザクロ(石榴)石蛇紋石造岩鉱物へき(劈)開

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