制御の対象となる機械に異なる動作や状態に対応した複数の段階があるとき、あらかじめ定められた制御動作の順序(シーケンス)と条件に従って各状態の推移を人間の手を介さずに逐次進めてゆく自動制御の方式である。
自動制御を行う機械の例として電気洗濯機をとりあげよう。洗濯機は、スイッチによる起動指令(制御動作)とタイマーによる一定時間経過後に行われる停止(制御動作)を基本として、給水、洗い、排水、給水、すすぎ、排水、脱水、乾燥などの段階の動作を、あらかじめ定めた順序で実行させることにより使命を果たす。これらの順序と段階の継続時間が正しく実行されるようにシーケンス制御されて洗濯物がきれいに仕上がる。一方、ルームエアコンは、室内の温度(制御量)を計測し、設定された希望の温度(目標値)と比較し、その偏差が減少するように加熱あるいは冷却を行い、室内温度(制御量)を目標値に近づけるように自動的に制御する。後者では信号(制御量)のフィードバックがあるのでフィードバック制御とよぶ。シーケンス制御との違いは、前者は制御信号(動作命令)が一方向的に制御対象に伝えられ、フィードバックがないという点である。
シーケンス制御の適用例は、自動販売機、交通信号機、変化するネオンサイン、自動織機など、われわれの身近にきわめて豊富である。この種の自動機械には、定められた順序以外に、前の制御動作の結果あるいは外界の条件に応じて、次に行うべき動作を選定する機能をもつ場合がある。前の動作の結果や外部の条件を命令処理部(論理回路)へもたらす信号はフィードバック信号の形態と似ている。しかし、制御動作命令を決定するための論理が、単なる経過時間ではなく、所定の外部条件が満足されるかどうかを考慮して次の動作が実行される論理操作とみなすべきである。いずれにせよシーケンス制御では各段階の制御動作が順序正しく実行されることに本来の制御目的があって、制御結果の量的な正確性は二次的な問題である。しかし、フィードバック制御においては、対照的に制御結果の量的な正確性が重視され、それに至る過程は二次的な問題とされている。
[山﨑弘郎]
『計測自動制御学会編『自動制御ハンドブック 機器・応用編』(1983・オーム社)』▽『青木正夫著『はじめて学ぶシーケンス制御回路のしくみ』上下(1987・技術評論社)』▽『増田英二著『よくわかるシーケンス制御入門』(1996・日本理工出版会)』▽『高橋寛監修、山崎靖夫・郷冨夫著『絵ときでわかるシーケンス制御』(2001・オーム社)』▽『中溝高好監修、永田重幸・斎藤誠著『シーケンス制御の基礎――リレー回路と論理回路』(2001・日新出版)』▽『大浜庄司著『図解 シーケンス制御の考え方・読み方――初歩から実際まで』第4版(2002・東京電機大学出版局)』▽『大浜庄司著『シーケンス制御がわかる本』(2004・オーム社)』
フィードバック方式と対比される自動制御の一方式。一般に制御とは,ある対象に適切な操作を加えて,それを希望する状態に保持したり,所要の変化を作り出したりすることをいうが,対象の状態の定量的あるいは定性的ふるまいのどちらを問題にするかにより,定量的制御と定性的制御に区分される。定量的制御にはフィードバック制御,すなわち対象の状態を目標値と比較して偏差があればこれを補正するような操作を加える制御方式が用いられることが多い。これに対しシーケンス制御は定性的制御の一つの方式で,あらかじめ定められた順序または条件に従って制御対象の状態に定性的な変化(不連続な変化)を逐次的に作り出すような制御である。身近なシーケンス制御の例について説明すると,たとえば自動電気洗濯機は,始動後に給水→洗濯→排水・脱水→給水→すすぎ→排水・脱水→停止というあらかじめ定められた順序に従って動作が進行する。また自動エレベーターでは,上昇,下降,停止の3種類の動作の繰返しで運転が進行する。ただし,その順序はあらかじめ定められたものでなく,各階の呼出し,乗客の行先指令,現在の進行方向などの条件によって決まる。言い換えるとシーケンス制御は,いくつかの段階からなる作業工程において,ある工程から次に進む論理的判断を人間に代わり自動的に行うものである。シーケンス制御系において,制御用の信号を作り出す制御装置は,論理信号すなわち二値信号かその組合せを取り扱うので,古くから電磁継電器などが用いられてきたが,最近ではシーケンス制御の内容を容易にプログラムできる専用コンピューター(プログラマブルコントローラー)が主流となりつつある。シーケンス制御は,日常面では上記のほか,自動販売機,交通信号,電話交換機などに見られる。機械工業分野では工作機械,組立機械,産業用ロボット,コンベヤシステムなどに応用され,プロセス工業ではとくにプラントのバッチプロセス(1サイクルの繰返し運転)に広く利用されている。
執筆者:児玉 慎三
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プラントの起動や停止操作などのように,あらかじめ決められた順序に従って,制御の各段階を逐次進めていく制御をいう.つまり,次の段階で行うべき制御動作があらかじめ決められていて,前段階の制御動作が終わったらすぐに次の動作に移る制御ということができる.あらかじめ定められた順序に従った動作の進行は,動作終了の確認,時間の経過,あらかじめ定められた条件の確認にもとづいて行われる.シーケンス制御での制御内容は,あらかじめ専用コントローラーにプログラムされる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…冷蔵庫で行われている自動制御はこの例である。これに対し,あらかじめ定められた一連の動作を逐次進めることが目的である自動制御が第2のものであり,シーケンス制御といわれている。上述の全自動洗濯機はこの例である。…
※「シーケンス制御」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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