フィードバックによって制御量の値を目標値と比較し,それらを一致させるように訂正動作を行う制御をフィードバック制御という。一例として,冷暖房装置によって部屋の温度をあらかじめ設定された希望の値に保持する温度制御系を考えよう。部屋の温度(制御量という)は,さまざまな要因によって変化する。例えば,部屋に人が何人いるかによって変わるし,外気温度によっても影響をうける。また,部屋の戸を開けたり閉めたりして外部の空気と接触することによっても大きく変化する。このように,制御量(温度)に影響を与えるさまざまな要因をまとめて外乱と呼ぶが,この外乱は制御中にどのように変化するかわからないのが普通である。このように未知の外乱によって影響された部屋の温度(制御量)を希望の値(目標値という)に一致させるためには,制御量を測定し,目標値と比較をして,目標値と制御量の差(制御偏差という)にもとづいて制御偏差を0とするように冷暖房装置を働かせ,熱の発生吸収を行わせる必要がある。熱の発生吸収を行う部分を操作部と呼んでいるが,制御偏差にもとづいてどのように操作部を働かせればよいかを判断する部分が調節部である。この制御系では,制御量の検出(検出部),目標値との比較,調節,操作という一連の反省・訂正動作によって,制御量が外乱によって受ける影響を軽減させている。したがって,その構成は,図1に示すような閉ループ構造をもつ。このような制御系をフィードバック制御系という。この例からもわかるように,フィードバック制御を行うわけは,制御量に影響を与える外乱が制御中にどのように変化するかわからないところにある。外乱によってうけた影響の結果(制御量)をみてはじめて訂正動作を行うところが特色である。結果をみてはじめて反省・訂正行動を行うのであるから,フィードバック制御では動作遅れのために好ましくない結果を生ずることがある。そのため調節部でこれに対する対策が講じられる(安定性)。
フィードバック制御の原理は,18世紀の産業革命期に,蒸気機関の速度調整にJ.ワットが遠心式調速機を使用したのがはじまりであるといわれている。しかし,産業のあらゆる分野で,フィードバック制御が意識的に使われるようになったのは,20世紀も中ごろになって工業の機械化が進み,マスプロ時代に入ってからである。とくに,第2次世界大戦中には軍事目的に利用され著しく進歩した。また,戦後は,重化学工業などのプロセス工業で利用され工場の自動化がすみずみまではりめぐらされた。これまで,フィードバック制御の応用分野としては,原動機・電動機の調速,発電機の電圧調整などの〈自動調整〉,プロセス工業において化学反応などを進行させるための環境条件を整えること(温度,圧力,流量,pHなどのプロセス変量の制御)を目的とした〈プロセス制御〉,兵器の自動照準や工作機械のならい制御などの〈サーボ機構〉(物体の位置,方位,姿勢などを制御量とし,その目標値の任意の変化に追従するように構成された制御系)の3分野が有名であるが,エレクトロニクス技術の進歩に伴い,調節部にコンピューターを用いることが多くなり,産業用ロボットに応用されたり,複雑で大規模なシステムの制御を対象とするようになり,調節方式も高度になり,ますます発展しつつある。
フィードフォワード制御フィードバック制御は,制御量に影響を与える外乱が未知であるため,外乱による影響をみてから訂正動作を行う。そのため,動作の時間的な遅れによって好ましくない結果を生ずることがある。もし,外乱を制御期間中に直接測定することができるならば,この信号を利用して,前もって外乱の影響を打ち消すような訂正動作を行ったほうがすぐれた制御効果が期待できる。この場合は,図2のような構成をもつので閉ループ構造はもたない。この制御方式をフィードフォワード制御feedforward controlという。一般に,すべての外乱を直接測定できるとはかぎらない。測定できる外乱には,フィードフォワード制御を行い,測定できない外乱に対しては,フィードバック制御を行って両方を併用する制御系を構成すれば,良好な制御効果が期待でき,プロセス工業でしばしば使われている。
執筆者:伊藤 正美
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…ウィーナー自身は数学者であるが,1919年からマサチューセッツ工科大学に勤務しており,同大学電気工学科で行われていた微分解析機と呼ばれる計算機の研究や砲照準制御装置の開発に興味を持っていた。その当時は第2次大戦中であり,砲の方向を自動制御する目的でフィードバック制御技術の研究が盛んに行われていた。フィードバック制御においては,目標とする方向と実際の方向の差を検出し,その差を小さくする方向に砲を動かす。…
※「フィードバック制御」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、和歌山県串本町の民間発射場「スペースポート紀伊」から打ち上げる。同社は契約から打ち上げまでの期間で世界最短を目指すとし、将来的には...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新