翻訳|sweet pea
マメ科(APG分類:マメ科)の一年生つる草。和名はジャコウエンドウ(麝香豌豆)、ジャコウレンリソウ(麝香蓮理草)。属名のLathyrusはエンドウのギリシア古名で、種名のodoratusはラテン語の「香気ある」という意味である。イタリアのシチリア島原産で、日本へは1862年(文久2)には渡来していた。茎は稜(りょう)形で翼があり、つるは長く、巻きひげに支えられて高さ1~2メートルになる。葉は羽状複葉で、短い柄がある。葉腋(ようえき)から花柄を出し、先端に径2~3センチメートルで芳香のある蝶形花(ちょうけいか)を3~4個開く。花色は紅、桃、青、紫、白色など豊富である。
品種により夏咲き、春咲き、冬咲きがあるが、日本でスイートピーといえば一般には温室で栽培される冬咲き種をさす。夏咲き種はもっとも古くから作出された系統で耐寒・耐暑性が強い。欧米で改良が進み、大輪で多花性のものがつくられている。10月に播種(はしゅ)すると、翌年5~6月に開花する。花色は紅、桃、青、白色などがある。つる性にならない矮性(わいせい)種のリトル・スイートハートは高さ約30センチメートルで、花壇や鉢植え用に人気がある。春咲き種は冬咲き種と夏咲き種の中間の性質があり、初夏の鉢物や花壇に利用される。暖地の戸外では4月下旬から咲き始める。ロイヤル系、カスバーソン・フロリバンダの春咲き種が多くつくられる。冬咲き種は温室内で育てられ、主として切り花用とする。系統はスペンサー系、マルチフローラ系がよく栽培される。代表品種はアメリカン・ビューティー(紅色)、グロリア(桃色)、リリー(白色)などである。ほかに冬咲き種で矮性のピュー系もよく栽培されるが、これは花が大輪で花壇、鉢植え用とする。
[岩井英明 2019年10月18日]
排水のよい肥沃(ひよく)で耕土の深い土質に植え、日によく当てて育てる。日当りが悪いと生育が悪く、花つきもよくない。花壇ならば、春咲き種は10月上~中旬、夏咲き種は10月中~下旬に、間隔20~30センチメートル、深さ2.5~3センチメートルで、1か所に3、4個の種子を直播(じかま)きする。発芽後は防寒をしなくても、そのまま越冬する。温室での切り花栽培は、冬咲き種を8月下旬ころ、4、5号鉢に3、4個播き露地で育て、発芽して茎がそろったら温室内に定植する。温室内は上下に針金を張って1株ごとに水糸を張るか、支柱を立ててこれにつるを誘引して垂直に伸ばす。つるが伸びて上部に達したら、つるを輪にして巻き下ろす。日中約20℃、夜間約10℃に保てば、12月から切り花ができる。
[岩井英明 2019年10月18日]
スイートピーは1650年、神父のフランシス・クパニFrancis Cupaniがシチリア島でみいだした。1699年にはイギリスに送られ、花の改良が始まり、1718年には白花がつくりだされた。品種改良に大きく貢献したのはイギリスのヘンリー・エックフォードHenry Eckfordで、スイートピーの父とよばれる。1900年のスイートピー200年展には264の品種が出品されたが、そのうちの115品種は彼の作出による。1862年(文久2)の関根雲停(うんてい)の写生図が残るので、幕末には渡来していたとみられるが、営利栽培は大正以降である。
[湯浅浩史 2019年10月18日]
芳香のあるエンドウに似た花をつけるマメ科のつる性一年草。ジャコウエンドウ,ジャコウレンリソウの和名がある。原産地はシチリア島。茎は有翼で葉は互生し,小葉は2枚で,その先は巻きひげとなって他物にからみつく。葉腋(ようえき)から出る花梗に3~5輪の大型の蝶形花を総状につける。花色は白,ピンク,紅,オレンジ,紫,青紫色,栗色など多数の品種がある。1695年イタリアの宣教師に記載されて以来,ヨーロッパとくにイギリスで改良が進み,大輪の夏咲きスペンサー系が作出された。その後アメリカで1906年に冬咲きスペンサーが作出されて温室栽培種となったが,1948年アメリカでカスバートソンF.G.Cusbertsonが夏咲系と冬咲系の交配により春咲種を作出し,これはカスバートソン系と称され,露地温室兼用,切花用種とひろく栽培されるようになった。さらに改良されたものには,矮性(わいせい)大輪種や小輪種があり,鉢作りやプランターにも適するものが作出されている。香水の原料にも利用される。種まきは10月上旬。種子には硬実があるので,吸水しないものは種皮に傷をつけてからまく。直まきしてもよいが,小鉢で育苗したものを植え替えるほうが望ましい。日当りよく排水のよい深い土によく育ち,曇雨天の多い地方では落蕾(らくらい)現象がはげしい。土の酸性が強いと育ちが悪いので,1m2に100~150gの消石灰を混入するとよい。温室栽培では巻きひげを摘みとり,つるを巻き戻して育てるが,鉢栽培では行灯仕立てとする。花言葉は〈出発〉または〈微妙な楽しみ〉。
執筆者:浅山 英一
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