化学辞典 第2版 の解説
スレーター-ポーリング法
スレーターポーリングホウ
Slater-Pauling's method
J.C. SlaterとL.C. Pauling(ポーリング)によって提唱された原子価の方向性を説明する方法.共有結合(電子対結合)が形成される場合に,注目する原子の軌道関数が球対称なら結合に方向性はないが,球対称でなければ,相手原子の電子軌道との重なりが最大となる方向で安定な結合が形成されると考えられるので,これにより原子価の方向性が説明される.たとえば,C原子における電子配置は(1s)2 (2s)2 (2p)2で,基底状態では 3P であり,この配置でメタンにおけるC原子の四価の方向原子価を説明することはできない.しかし,混成の操作によって sp3混成軌道関数をつくれば正四面体形の原子価に対応する四つの方向にそって電荷の分布した状態ができ,その方向でH原子の軌道との重なりが最大になって安定な結合が形成される.このようにして四価の方向原子価を説明することができる.同様にして,sp2 およびsp混成軌道関数によって,それぞれエテンやアセチレンの炭素の方向原子価を説明することができる.[別用語参照]原子価結合法
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報