スワート(英語表記)Swāt

デジタル大辞泉 「スワート」の意味・読み・例文・類語

スワート(Swat)

パキスタン北西部、カイバルパクトゥンクワ州のスワート渓谷を中心とする地域名。ペシャワール盆地を流れるカブール川の支流スワート川の中流・上流域を指し、周囲を山々に囲まれる。中心都市はミンゴーラ。紀元前2世紀から紀元9世紀頃に仏教文化が盛んになり、ブトカラウデグラムをはじめ、古代ガンダーラ王国時代の遺跡多く残っている。スワット

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改訂新版 世界大百科事典 「スワート」の意味・わかりやすい解説

スワート
Swāt

パキスタン北西部のスワート峡谷を中心とする地方で,南のガンダーラとは山岳によって隔てられている。古くはウディヤーナUḍḍiyāna,Udyāna,烏仗那(うじような),烏萇(うじよう)などと呼ばれ,険しい山に囲まれた盆地ということもあって外来勢力の支配を受けることも少なく,クシャーナ時代から8世紀ころまで仏教が栄えた。中国僧の法顕,宋雲,玄奘,慧超,悟空などの旅行記に聖地のようすが述べられている。1956年以来イタリア中・極東研究所によって本格的な発掘調査が行われた。ウディヤーナ国の首都は,現在のサイドゥ・シャリフの北東3kmほどのミンゴーラMingora(玄奘のいう瞢掲釐(もうかり)城)にあたり,この付近に遺跡が多い。ミンゴーラの南のブトカラButkaraの仏教寺院址が最も重要で,5度拡張された大ストゥーパのまわりに約200の小ストゥーパがあり,それらの囲壁の外に僧院があったらしい。サイドゥ・シャリフ西方のウデグラムUdegramには都市址があり,マウリヤ朝(前4世紀)からササン朝侵入期(4世紀)までの層位が確認された。仏教彫刻の作風ガンダーラ美術のそれに類似しながらも土着化の傾向が強く,中インドと結びつくところもあり,中央アジアへの伝播を考える上で貴重である。出土品の多くはサイドゥ・シャリフのスワート博物館に収められている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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