日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソフィーの選択」の意味・わかりやすい解説
ソフィーの選択
そふぃーのせんたく
Sophie's Choice
アメリカの作家スタイロンの1979年に発表された長編。ヒロインのソフィーはポーランドからアメリカに亡命してきた女性で、ユダヤ人ではないがナチスの強制収容所で過ごした経験がトラウマ(心的外傷)となっている。ニューヨークでの彼女はユダヤ人の恋人を得るが、彼は精神を病んでおり、この2人を軸としたドラマを、ニューヨークのブルックリンにやってきて、ヒロインと同じアパートに住む作者自身を思わせる若者の眼(め)を通して描く。ホロコーストの暴虐にみられるナチスの狂気を生き延びた者の罪の意識、恐怖を通して、20世紀の悪に果敢に挑戦した問題作。なお、アラン・J・パクラAlan J. Pakula(1928―98)監督、メリル・ストリープMeryl Streep(1949― )主演で撮られた映画化作品(1982)も大いに注目された。
[金敷 力]
『大浦暁生訳『ソフィーの選択』全2冊(1983・新潮社)』