ソルビー(読み)そるびー(英語表記)Henry Clifton Sorby

改訂新版 世界大百科事典 「ソルビー」の意味・わかりやすい解説

ソルビー
Henry Clifton Sorby
生没年:1826-1908

岩石・金属の顕微鏡組織学の創始者。イギリスのシェフィールド生れ。大学には行かず,家庭教師によって教育を受け,刃物製造業者であった父の遺産をもとに,自宅を研究室として独立・独身研究者の生涯を送った。つねに立ち戻った岩石学研究では,はじめて偏光顕微鏡を用い,火成岩変成岩堆積岩組成を定量的に研究し,その成因を明らかにした。その間に,鉄隕石鉄鋼薄片試料を反射光で顕微鏡観察し,その組織像を写真に記録した(1864)。1885年にこの研究の重大意義を認めたイギリス鉄鋼協会の要請で研究を再開し,鉄鋼に,純鉄相,真珠光沢相,高炭素硬質相,黒鉛などの7相があることを示し,真珠光沢相が純鉄と炭素化合物の薄い互層からなることを明らかにした。彼を社会的に有名にしたのは微量血液の分光分析(1864),〈新元素ヤルゴニウム〉の発見論争(1869)であった。1878年以後,毎年の海上巡航で,海洋生物の研究,沿岸教会建築材料の研究を楽しんだ。80年以後はシェフィールド大学創設に尽力し,1904年からは病床で岩石学研究の結果をまとめた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソルビー」の意味・わかりやすい解説

ソルビー
そるびー
Henry Clifton Sorby
(1826―1908)

イギリスの岩石学者、化学者。ヨークシャー州ウッドボーンに生まれる。岩石を薄片にして顕微鏡で研究することを創始した。この方法により、粘板岩劈開(へきかい)と雲母(うんも)片の配列が一致していることや、石英の中に流体包有物が多数含まれていることなどを発見した。さらに転じて、隕石(いんせき)や鋼の試料も顕微鏡で研究し、金相学の樹立に貢献した。

[橋本光男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ソルビー」の意味・わかりやすい解説

ソルビー

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世界大百科事典(旧版)内のソルビーの言及

【鋼】より

…19世紀に入るとベリマンの成果はドイツのカルステンKarl Johann Bernhard Karsten(1782‐1853),ランパディウスWilhelm August Lampadius(1772‐1842)らによって引き継がれ,高炉では吸炭が,精錬炉では脱炭が,浸炭法では吸炭が生じることなどが明らかにされた。また合金鋼に関するM.ファラデーの研究,鉄鋼の変態点に関するロシアのチェルノフDmitrii K.Chernov(1839‐1921)の研究,鉄鋼の顕微鏡組織に関するイギリスのソルビーHenry Clifton Sorby(1826‐1908)やドイツのマルテンスAdolf Martens(1850‐1914)の研究,鉄鋼の変態に関するフランスのF.オスモンの研究,鋼中の炭素の役割に関するイギリスのJ.O.アーノルドの研究,鉄鋼の状態図に関するイギリスのオーステンWilliam Roberts Austen(1843‐1902)やオランダのローゼボームHendrik Willem Bakhuis Roozeboom(1854‐1907)らの研究が相次ぎ,鋼の硬化と熱処理,組織,状態図との関係など,今日の鋼の物理冶金学の基礎が築かれた。鋼の組織の名前であるソルバイト,マルテンサイト,オーステナイト,トルースタイト,レーデブライトなどは,それらの先人の業績にちなんで命名された。…

【鉄】より

…18世紀から19世紀にかけて鉄鋼の化学が技術に衝撃を与えたとすれば,19世紀から20世紀にかけては鉄鋼の物理化学と結晶構造学が技術に衝撃を与えた。1863年のH.C.ソルビーの炭素鋼から晶出および析出する結晶(フェライト,セメンタイト,パーライト,グラファイトなど)の顕微鏡による発見,マルテンスA.Martens(1850‐1914)の1878年論文の同じ発見,ロシアのD.K.チェルノフの1868年論文の樹枝状晶および結晶粒の成長に関する理論および焼入れ焼戻しの理論,F.オスモン(1849‐1912)の80年代の鉄の変態(α鉄,β鉄,γ鉄)の発見,オーステンW.Roberts‐Austen(1843‐1902)の97年論文の,そしてH.W.B.ローゼボームの1900年論文の鉄と炭素の状態図は,炭素鋼の凝固過程の晶出析出の全貌を明らかにした。その後はあらゆる合金鋼の状態図が調べられていくのである。…

【鋼】より

…19世紀に入るとベリマンの成果はドイツのカルステンKarl Johann Bernhard Karsten(1782‐1853),ランパディウスWilhelm August Lampadius(1772‐1842)らによって引き継がれ,高炉では吸炭が,精錬炉では脱炭が,浸炭法では吸炭が生じることなどが明らかにされた。また合金鋼に関するM.ファラデーの研究,鉄鋼の変態点に関するロシアのチェルノフDmitrii K.Chernov(1839‐1921)の研究,鉄鋼の顕微鏡組織に関するイギリスのソルビーHenry Clifton Sorby(1826‐1908)やドイツのマルテンスAdolf Martens(1850‐1914)の研究,鉄鋼の変態に関するフランスのF.オスモンの研究,鋼中の炭素の役割に関するイギリスのJ.O.アーノルドの研究,鉄鋼の状態図に関するイギリスのオーステンWilliam Roberts Austen(1843‐1902)やオランダのローゼボームHendrik Willem Bakhuis Roozeboom(1854‐1907)らの研究が相次ぎ,鋼の硬化と熱処理,組織,状態図との関係など,今日の鋼の物理冶金学の基礎が築かれた。鋼の組織の名前であるソルバイト,マルテンサイト,オーステナイト,トルースタイト,レーデブライトなどは,それらの先人の業績にちなんで命名された。…

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