粘板岩(読み)ネンバンガン(英語表記)slate

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デジタル大辞泉 「粘板岩」の意味・読み・例文・類語

ねんばん‐がん【粘板岩】

泥岩頁岩けつがんが弱い変成作用を受けて、板状にはがれやすくなった岩石。黒色緻密ちみつで、スレート・石盤・硯石すずりいしなどに利用。
[類語]堆積岩水成岩石灰岩凝灰岩大谷石礫岩砂岩泥岩

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精選版 日本国語大辞典 「粘板岩」の意味・読み・例文・類語

ねんばん‐がん【粘板岩】

  1. 〘 名詞 〙 頁岩・泥岩などの堆積岩が広域変成作用を受けてできた岩石。灰黒色、緻密で、板状にはがれやすい。石英・雲母・緑泥石などの細粒によって構成される。スレート・石盤・硯石などに用いる。
    1. [初出の実例]「秩父系 輝岩。石英岩。〈略〉砂岩。粘板岩」(出典:日本風景論(1894)〈志賀重昂〉九)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「粘板岩」の意味・わかりやすい解説

粘板岩
ねんばんがん
slate

泥岩あるいは頁(けつ)岩が弱い変成作用を受け片理がよく発達したために、片理に沿って薄く板状に割れやすい性質をもつ泥質の岩石。スレートともいう。厳密には変成岩であるが、再結晶の程度がきわめて弱く細粒であるために、堆積(たいせき)岩として取り扱うこともある。一般に暗灰色から黒色で、凝灰質のものでは赤紫色や緑色を呈する。中・古生層の泥質岩に多い。石質は緻密(ちみつ)で硬く湿気を吸収することが少なく、薄板として採石しやすく、また割れた表面に凹凸が少ないために、屋根瓦(やねがわら)、石盤、硯(すずり)、敷石、石碑などに利用される。粘板岩の石材としては、剥離(はくり)性に富み平らな薄板状になるものに宮城県女川石(おながわいし)があり、あまり剥離性が発達せず大材として採石される宮城県石巻(いしのまき)市産の井内石(いないいし)がある。碁(ご)石の黒石として有名な那智黒(なちぐろ)も、黒色粘板岩である。

[斎藤靖二]

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改訂新版 世界大百科事典 「粘板岩」の意味・わかりやすい解説

粘板岩 (ねんばんがん)
slate

泥岩あるいはケツ岩が弱い広域変成作用をうけて剝離性が発達した片状細粒岩。スレートともいう。変成作用が進んで強く再結晶や剝離性が発達したものは千枚岩という。ケツ岩の剝離性は粘土鉱物や雲母類が圧縮されて平行に並び換わることによって起こるので,一般に層理面に平行であるが,粘板岩の場合には機械的変形が著しく,剝離面は層理面と無関係に発達している。しかし,剝離性の発達したケツ岩は粘板岩と呼ばれることが多い。粘板岩では変成作用による再結晶はほとんど認められないので,これを堆積岩の一種とみなしてもよい。粘板岩は石英,長石,絹雲母,緑泥石などからなり,剝離性は絹雲母や緑泥石の定向再配列によって起こる。日本の古生代中生代の泥質堆積岩の大部分は広い意味で粘板岩と呼ばれている。屋根瓦や石碑,また砥石,硯として利用される。雄勝(おがつ)石(宮城県),雨畑石(山梨県),赤間石(山口県),那智石(和歌山県)などが有名。
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岩石学辞典 「粘板岩」の解説

粘板岩

clay slate: 非常に弱い変成作用を受けた粘土質岩石で,割れ目や劈開(へきかい),初期の葉状構造を示すもの.変成作用で再改変されたセリサイト,緑泥石,緑簾石,緑色雲母などは元の粘土の50%以下である[Flawn : 1953].しかし実際には粘板岩(clay slate)と千枚岩(phyllite)との間には区別ができるかどうか疑わしい[Harker : 1935].一般に粘板岩は粘土質の岩石からできたスレート(板岩)と,非常に硬く固結した頁岩の両方に使われているが,本来は前者の意味.日本語の粘板岩は地質調査所の人々によるTonn Schieferの訳らしく,白野夏雲により1883(明治16)年に硯石に関する論文に用いられた[歌代ほか : 1978].泥土岩スレート(pelite slate, slate-pelite)[Van Hise : 1904].
slate: →スレート

粘板岩

小さな節(こぶ)のある雲母片岩.粘土質堆積岩の接触変成岩で,黒雲母の細片の集合や,炭質物の集合によって生じた点紋が含まれる.菫青石紅柱石の斑状変晶を含む場合もある[Cotta : 1862].

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百科事典マイペディア 「粘板岩」の意味・わかりやすい解説

粘板岩【ねんばんがん】

スレートとも。薄板状に剥離(はくり)しやすい性質(スレートへき開)をもつ,微細粒の鉱物からなる緻密(ちみつ)な変成岩。色はふつう灰黒色。ケツ岩,泥岩その他微細な堆積物が微弱な広域変成作用を受けたもので再結晶作用は微弱。一般にアルミナに富んでいるが,石灰質やケイ質のものもある。古〜中生代の泥質堆積物は粘板岩となっていることがある。瓦や敷石などに利用。
→関連項目ケツ(頁)岩スレート泥岩砥石

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「粘板岩」の意味・わかりやすい解説

粘板岩
ねんばんがん
slate

泥質岩に剥離性が発達した岩石。泥質岩が広域的な微弱な変成作用を受けるとやや再結晶作用が進み,岩石劈開が発達して薄くはげやすくなる。岩石劈開による剥離面は地層面と一致するものが多いが,一致しない場合もしばしばある。日本の古生界や中生界にきわめて多い。粘板岩の変成が少し進んだものが千枚岩。石板,瓦,砥石 (といし) などに使われる。

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化学辞典 第2版 「粘板岩」の解説

粘板岩
ネンバンガン
slate

泥岩けつ岩が圧力を受けてち密になった板状岩石.砥石(といし)や硯(すずり)石に使われる.黒の碁石の那智黒は黒色粘板岩の一種.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の粘板岩の言及

【ケツ岩(頁岩)】より

…1/16mm以下の砕屑物質を主とする岩石を泥岩と呼ぶが,泥岩のうちで,本のページを重ねたようにみえ,剝離性を有するものをケツ岩と呼ぶ。さらに剝離性が発達すると粘板岩(スレート)と呼ばれる。剝離性は岩石が風化するとよく現れる。…

【結晶片岩】より

…例えば,変成岩の主成分鉱物が石英と白雲母であれば石英‐白雲母片岩と,また,変成岩の元来の化学組成上の性質を参考にして,例えば泥岩質の変成岩ならば泥質片岩pelitic schistというようによばれる。結晶の大きさが小さく片状組織もよく発達していない一群の変成岩は千枚岩とよばれ,さらに片状組織が弱いものは粘板岩(スレート)とよばれる。一方,変成度が高くなると,片状組織は弱いが結晶粒が大きく縞状組織をもつ片麻岩になる。…

【石材】より

…緑色の地に白の方解石の脈が網目状に入る蛇紋岩は,成因は異なるが装飾用石材として大理石の一種に扱われている。(6)その他の岩石 このほか粘板岩や結晶片岩など,板状節理を持つ石の屋根材,敷石,張石としての利用は,外国では別に珍しくはないが日本ではまれで,宮城県の雄勝石(おがついし)がほとんど唯一の例である。この石はまた,すずり石としても利用されている。…

※「粘板岩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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