隕石の一種。別名隕鉄ともいう。大部分がニッケル・鉄合金(約98.34%)からなり,このほかに少量のシュライバーサイト(Fe,Ni,Co)3P(1.12%),コーエナイトFe3C(0.42%),トロイライトFeS(0.12%)および石墨C(まれにダイヤモンド)を含む。きわめてまれにドーブレライトFeCr2S4,ローレンサイトFeCl2などが含まれることもある。比重は7~8。落下数は,隕石全体の5~6%程度であるが,地表岩石との区別が容易なため発見率が隕石中で最も高い。重量的にも大きいものには鉄隕石が多く,巨大なもの(数t程度)はすべて鉄隕石である。世界最大の隕石はナミビアのホバ鉄隕石で重さ約66t,最大直径2.95mである。日本では滋賀県田上山の鉄隕石(重量174kg)が最大。鉄隕石の平均組成とコンドライトの金属相の平均組成の密接な対応関係より,鉄隕石はコンドライト組成物質の部分的あるいは完全融解により分離した金属相を代表し,それが地球中心部の核に対応すると推定されている。鉄隕石はNi含有量により,ヘキサヘドライトhexahedrite(Ni4~6%),オクタヘドライトoctahedrite(Ni6~14%)およびアタキサイトataxite(Ni14%以上)に細区分される。鉄隕石のうち約85%を占めるオクタヘドライト中には,カマサイトkamacite(α-鉄,Ni4~6%)およびテーナイトtaenite(γ-鉄,Ni30~60%)が含まれる。オクタヘドライトの切断研磨面の硝酸アルコール溶液によるエッチングを行うと,両鉱物による三角形や平行四辺形の格子模様からなる特徴的なウィドマンシュテッテンWidmanstätten構造が観察される。一方,ヘキサヘドライトでは同様にノイマンバンドと呼ばれる細い平行線群が認められる。アタキサイトではきわめて細かなカマサイトとテーナイトの集合体(プレッサイトplessite)からなり,なんら規則的な構造は示さず,Ni含有量のきわめて少ないヘキサヘドライトとともに塊状鉄隕石と呼ばれる。ウィドマンシュテッテン構造は高温からゆっくり冷却された合金に認められる典型的な離溶組織で,オクタヘドライト中でニッケル・鉄合金のテーナイトが高温から徐冷されるとき,その面心格子(111)に平行にカマサイトが析出するために現れる。カマサイト帯の幅が広いほどその中のニッケル含有量は少ない。ニッケルの拡散速度から平均2~10℃/100万年というきわめてゆっくりした冷却速度が推定され,この冷却速度に調和する母天体の大きさは半径150~250km程度と推定されている。しかし,鉄隕石全体から見られる冷却速度の幅広いばらつきは,隕石母天体の大きさが半径300km程度の大きさから数十kmの大きさのものまでさまざまであったか,あるいは鉄隕石が母天体内部の異なる深さに位置していたためと考えられている。鉄隕石中にまれに含まれるダイヤモンドは高圧を意味するか,衝突時の衝撃波によるものかは決着がついていない。
→隕石
執筆者:松枝 大治
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