日本大百科全書(ニッポニカ) 「鉱石顕微鏡」の意味・わかりやすい解説
鉱石顕微鏡
こうせきけんびきょう
岩石や鉱石中の不透明な鉱物を観察するための顕微鏡。反射顕微鏡の一種。不透明鉱物は透過光では観察できないため、試料を鏡面のように磨き上げたもの(これを研摩片という)に上から光を当て、その反射光によって観察する。鉱石顕微鏡では光を横から鏡筒内に導き、プリズムによって直角に曲げ試料上に落射させる。反射光は普通の顕微鏡と同じように鏡筒内を上方に通過して観察される。また、この顕微鏡には次の三つの特殊装置が付属している。一つは十字線を張った接眼鏡、もう一つは光源から試料の研摩面までの光路に1個と、試料面から目までの間に1個の計2個1対の偏光子(へんこうし)(ポーラー)であり、第三のものは顕微鏡の軸を中心として360度回転できる載物台である。二つの偏光子は振動の方向を互いに直角にしておく。第一の偏光子のみを用いて試料を回転しながら観察すると、落射光に対する多色性がみられ、さらに第二の偏光子を加えると、消光現象などの異方性が観察できる。鉱石顕微鏡はこのほかにも鉱石の組織、鉱物の反射能、内部反射などの観察や硬度の測定にも用いられる。なお、金属顕微鏡も反射顕微鏡の一種であるが、これは偏光子や回転載物台を備えていない。
[橋本光男]