改訂新版 世界大百科事典 の解説
ゾリンジャー=エリソン症候群 (ゾリンジャーエリソンしょうこうぐん)
Zollinger-Ellison syndrome
膵臓や胃・十二指腸壁に発生したガストリンを産生する細胞の腫瘍(ガストリノーマ)によって起こる疾患。1955年にアメリカの外科医ゾリンジャーR.M.ZollingerとエリソンE.H.Ellisonが初めて症例を報告したのでこの名がつけられた。高ガストリン血症,胃酸分泌亢進,難治性の消化性潰瘍がみられるのが特徴で,そのために腰痛,下痢,吐血,下血などの症状を呈する。潰瘍はしばしば,普通はみられない十二指腸球部より下位に発生し,また穿孔(せんこう)を起こす頻度が高い。腫瘍の約6割は悪性で肝臓などに転移がみられる。しばしば副甲状腺腫などの他の内分泌腺腫を合併する。治療は,外科的に腫瘍を摘出するとともに,ガストリンの標的器官である胃を全部摘出(全摘)するのが原則である。転移があったりして腫瘍の摘出が不可能な場合でも,胃の全摘により原腫瘍や転移腫瘍が縮小したり発育が抑制されたりすることが知られている。
執筆者:谷 礼夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報