デジタル大辞泉
「消化性潰瘍」の意味・読み・例文・類語
しょうかせい‐かいよう〔セウクワセイクワイヤウ〕【消化性潰瘍】
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しょうかせい‐かいようセウクヮクヮイヤウ【消化性潰瘍】
- 〘 名詞 〙 胃液によって、胃や十二指腸の粘膜が消化されることにより生ずる潰瘍。嘔吐、食欲不振、吐血、下血などの症状をきたす。〔薬の効用(1964)〕
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家庭医学館
「消化性潰瘍」の解説
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消化性潰瘍(胃・十二指腸潰瘍)(胃・十二指腸疾患)
定義・概念
消化性潰瘍は胃液やペプシンなどにより消化管壁が傷害を受けて組織の欠損を生じた良性疾患であり,一般的には胃潰瘍および十二指腸潰瘍を指している.攻撃因子と防御因子のバランスが失われて潰瘍が生ずるとされた病態について,最近ではHelicobacter pylori感染と非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)が消化性潰瘍の2大成因であることが判明している.
分類
消化性潰瘍には以下に示すようなさまざまな分類法があるが,臨床的には単独ないしは組み合わせて用いられている.
1)急性潰瘍と慢性潰瘍:
消化性潰瘍を急性潰瘍と慢性潰瘍に分類するもので,前者は一般的に急性胃・十二指腸粘膜病変(AGDML)と称されているもので,H. pyloriの初感染ないしはNSAIDsにより生ずることが判明している.一方,後者は再発や再燃を繰り返す従来の「潰瘍症」を呈するものである.
2)ステージ分類:
通常,内視鏡的に観察される潰瘍の活動性による分類であり,潰瘍が形成されて急性期すなわち潰瘍周辺に浮腫を認める活動期,潰瘍の周囲に組織修復を表す再生上皮の出現を認める治癒期,潰瘍底において白苔の消失を認める瘢痕期に分類されている(図8-4-12).専門的には,活動期をA1,A2,治癒期をH1,H2,瘢痕期をS1,S2と細分類(崎田分類)し,白色瘢痕であるS2を完全治癒とする場合が多い.
3)潰瘍の部位による分類:
潰瘍病変の存在部位により,一般的には,胃潰瘍,十二指腸潰瘍,胃・十二指腸潰瘍および吻合部潰瘍に分類されている.
4)原因による分類:
消化性潰瘍の原因で分類する方法で,H. pylori陽性潰瘍,NSAIDs潰瘍,非H. pylori・非NSAIDs潰瘍と呼称されている.最近,わが国で発表されている「消化性潰瘍診療ガイドライン」(消化性潰瘍診療ガイドライン委員会,2009)では,この分類を基盤とした治療方針が推奨されている.
5)合併症を考慮した分類:
消化性潰瘍のおもな合併症を考慮した分類法で,合併症を有さない通常潰瘍,出血性潰瘍,穿孔性潰瘍,狭窄性潰瘍に分類され,治療方針の指標として用いられる.
成因(図8-4-13)
消化性潰瘍の成因については,胃十二指腸粘膜に対する攻撃因子と防御因子のバランスが失われて生ずるという天秤説がいまも主体である.胃酸分泌の相対的な亢進およびストレスや喫煙などの生活習慣が消化性潰瘍の発症や再発に重要な因子とされ,潰瘍治療の主役は胃酸分泌抑制剤薬に加えて安静や喫煙など生活習慣の改善であったが,現在では,Zollinger-Ellison症候群やCrohn病に伴う特殊なものを除外すれば,H. pylori感染とNSAIDsに関連するものが大部分と判明している.
疫学
1)消化性潰瘍による死亡率の推移:
年次別の人口動態統計による消化性潰瘍の死亡者数は,1950年から1990年まで経年的に著しい減少を示していた.これは,内視鏡による診断および治療法の進歩およびヒスタミン受容体拮抗薬(H2-RA)やプロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor:PPI)など強力な胃酸分泌抑制薬の登場によって,潰瘍の合併症である出血や穿孔が減少したためと考えられる.しかし,1990年以降は人口の高齢化に伴う合併症の増加を反映して死亡者数が横ばいとなっている.
2)消化性潰瘍の有病率:
正確な有病率は不明であるが,医療機関に対する調査では1日あたりの受診率は1970年から1996年まで増加傾向にあったが,最近では減少傾向がみられる.また,胃集団検診による胃潰瘍の発見率は,1年あたり約1~2%で,最近ではわずかながら漸減傾向がみられている.このように全体での消化性潰瘍患者の有病率は低下傾向である.しかし,最近では入院を要する出血性潰瘍患者の約30%がNSAIDsあるいは低用量アスピリンの常用者であり,このような患者では,さらに別の抗血栓薬を併用されている場合も多く,重篤な消化管出血をきたす可能性のあるハイリスク患者の増加に注意が必要である.
3)NSAIDs起因性潰瘍の推移:
今後,増加が危惧されているNSAIDsの影響については,わが国での関節リウマチ患者を対象とした1990年の検討でNSAIDsの長期投与による潰瘍の発見率は胃潰瘍15.5%,十二指腸潰瘍1.9%であったが,内視鏡を用いて行われた最近の実態調査では低用量アスピリン常用者のうち約7%に消化性潰瘍が認められており,心血管系の血栓症を有する高齢者に対する診療で今後の大きな課題となっている.
病理・病態生理
1)病理学的な「潰瘍」と「びらん」:
胃・十二指腸壁は,内腔側から粘膜,粘膜下層,筋層,漿膜により構成されているが,病理組織学的には粘膜下層より深い部分まで組織欠損を生じたものが「潰瘍」(ulcer)と定義されている.一方,粘膜内の組織欠損については潰瘍ではなく「びらん」(erosion)とされている.しかし,最近は,臨床研究の際などを中心として,欧米の規定に準じて最大径3 mm以上の白苔を有する粘膜欠損を潰瘍と定義されることが多くなっていることにも注意が必要である.
2)病態生理:
消化性潰瘍はH. pylori感染やNSAIDsの関与が深いことが判明しているが,従来から「No acid,no ulcer」といわれたように攻撃因子として胃酸分泌の役割も大きい(図8-4-13).壁細胞からの胃酸分泌は,食事やストレスなどにより変化するガストリンやソマトスタチンの消化管ホルモンや迷走神経により調節されているが,PPIなどの胃酸分泌抑制剤が潰瘍治癒に有効であることからも,潰瘍の形成には胃酸分泌の亢進が必須であるといえる.一方,H. pylori感染による胃粘膜の炎症は血流の低下などによる粘膜防御能の低下をきたし,NSAIDsによる内因性プロスタグランジン(PG)の低下も胃潰瘍・十二指腸粘膜の脆弱性を惹起して潰瘍が発症しやすい母地を形成する.
臨床症状
消化性潰瘍の自覚症状として典型的なものは空腹時の心窩部痛ないしは背部痛であり,食物の摂取により痛みが軽快することが特徴的であるが,不定愁訴のみの場合や無症状の場合も多い.なお,出血や狭窄などの合併症を伴う場合には嘔吐,吐下血,貧血などを認め,穿孔性潰瘍では急激な痛みが突然に出現することが特徴といえる.低用量アスピリンを含むNSAIDs起因性潰瘍の場合には痛みではなくタール便で発症することが多い.他覚的な特徴は心窩部の圧痛である.
診断
消化性潰瘍は上部消化管のX線検査ないしは内視鏡検査により診断されるが,確定診断のためには内視鏡検査が必要である.特に,出血性潰瘍は診断と同時に治療が必要な緊急性を有する疾患であり,吐血や下血といった明らかな症状を伴う場合は緊急内視鏡検査が必要である.
通常の消化性潰瘍については,治療方針を決定するために,内視鏡検査により病期(活動期・治癒期・瘢痕期)を正確に診断することが重要である.さらに,正確なH. pylori感染の診断のために種々の感染診断法に熟知しなければならない(表8-4-3).NSAIDsに起因しない消化性潰瘍の90%以上はH. pylori陽性であることから,出血性潰瘍や高度の萎縮性変化を認める胃潰瘍症例では偽陰性を考慮して複数の検査法により確認する.
鑑別診断
消化性潰瘍の鑑別すべき疾患は胃癌や悪性リンパ腫などの悪性疾患であり,良性潰瘍と診断するためには内視鏡検査が必須である.さらに,内視鏡的にもまぎらわしい病変において良性潰瘍の確定診断を行うには,病理組織診断により胃癌や悪性リンパ腫などの悪性疾患を除外するための生検が必要である.
合併症
消化性潰瘍合併症としては,突然の発症および緊急的な処置を特徴とする上部消化管出血および胃・十二指腸壁の穿孔が重要である.慢性的な合併症としては幽門狭窄がある.
初期治療と再発予防
消化性潰瘍の治療として,臨床的に重要なのは出血や穿孔および狭窄の合併症をコントロールすることであり,さらには活動性潰瘍を瘢痕期へと改善し,潰瘍の再発を予防することが最終目標である.日常診療における具体的な治療方針として日本消化器病学会が提唱する『消化性潰瘍診療ガイドライン』が普及している.
1)合併症を有する消化性潰瘍に対する治療:
a)出血性潰瘍:吐下血などの出血症状を伴う場合には,ショックなど全身状態を把握した後,緊急内視鏡検査を行い内視鏡的治療を先行する.内視鏡的止血治療の適応となるのは噴出性出血,湧出性出血,露出血管を有する症例であり,内視鏡治療24時間後に内視鏡による経過観察を行う.内視鏡止血後の再出血予防に対しては,胃酸分泌抑制薬の投与が有効であり,絶食の期間は急性期の48時間が妥当である. b)潰瘍穿孔:潰瘍穿孔の場合,内科的治療の適応になるのは,発症後24時間以内,合併症がなく全身状態が安定し,腹膜刺激症状が上腹部に限局し,腹水が少量の場合である.内科的治療としては,絶飲食,補液,経鼻胃管留置,抗菌薬およびPPIまたはH2-RAの経静脈的投与が必要となる. 上腹部に限局しない腹膜炎,多量の腹水ないしは胃内容物を有する場合は外科的手術の適応となる.さらに,経時的なCT検査で腹腔内ガスや腹水の増量を認める場合や腹部筋性防御が24時間以内に改善しない際も手術適応となる. c)幽門狭窄:潰瘍に伴う幽門狭窄の場合,嘔吐,体重減少,内視鏡の通過が不能などの通過障害による症状が認められる場合には絶食およびPPIを用いた内科的治療を行うが,内科的治療に抵抗性の場合には内視鏡的バルーン拡張術を行い,内視鏡的治療に対しても改善しない場合には外科的手術の適応を考慮する. d)合併症がコントロールされた後の治療:内視鏡的な止血成功後には,通常の潰瘍治療を施行するが,出血性潰瘍の長期的な再出血予防にはH. pylori除菌治療が有用であり,内科的治療により改善する穿孔例や狭窄例および外科的手術後症例に対しては引き続き通常の潰瘍治療を行う.
2)合併症のない通常の消化性潰瘍に対する治療(図8-4-14)
a)NSAIDs潰瘍の治療と再発予防:通常の消化性潰瘍と診断された場合,詳細な問診によりNSAIDs服用の有無を明らかにすることが先決である.NSAIDs内服が確認された場合,NSAIDsを中止可能な場合はH. pylori除菌治療を中心とした潰瘍治療を行う.一方,NSAIDs内服の継続が必要な場合は,PPIないしはPG製剤による治療が推奨されているが,PG製剤には腹痛や下痢などの副作用が多いためPPIが第一選択薬である.H. pylori除菌治療はNSAIDs潰瘍の治癒を遅らせる可能性があり,除菌が必要と判断される場合でも潰瘍の治癒後に施行する.
アスピリンを含むNSAIDs潰瘍は出血や穿孔など重篤な合併症を伴う再発が多いため再発予防が重要である.NSAIDs潰瘍の再発予防にはPPI,PG製剤ないしは高用量のH2-RAが有効とされているが,高用量H2-RAの予防投与は保険適用になっておらず,アスピリンやNSAIDs潰瘍の再発予防にはPPIが最適である.
b)NSAIDsの内服がない場合のH. pylori感染のチェック:NSAIDsを中止できる場合やNSAIDs内服のない場合,H. pylori感染の有無により治療法を設定する.H. pylori感染の診断法には種々あるが,すべての検査法に偽陰性が存在する点に注意が必要である.特に,出血性潰瘍やPPIを使用している場合,さらに高度の萎縮性胃炎を有する胃潰瘍症例では偽陰性を示す例が多く,複数の感染診断法を使用して確認する必要がある.
c)H. pylori陽性潰瘍の治療と再発予防:H. pylori陽性の場合,潰瘍治癒および再発予防の有用性から除菌治療が第一選択である.薬剤アレルギーなど除菌治療不適応例に対してはPPIを中心とした胃酸分泌抑制を主体とした潰瘍治療を選択する.
ⅰ)H. pylori除菌治療:除菌治療のレジメンは,PPIとアモキシシリン(AMPC)およびクラリスロマイシン(CAM)による3剤併用療法が一次治療として推奨されており保険適用にもなっている.除菌成否の判定は除菌治療が終了してから4週間以後に行うことが推奨されている.除菌の判定で除菌が不成功であった場合,CAMをメトロニダゾール(MNZ)に代えた二次除菌治療を行う.一次除菌治療の除菌成功率は80%程度であり,MNZを用いた二次除菌療法の除菌成功率は90%であるが,一次除菌失敗例に対してのみ保険適用となっている.
ⅱ)除菌治療後の潰瘍治療:活動性潰瘍に対しては1週間の除菌治療に引き続き十二指腸潰瘍の場合6週間,胃潰瘍の場合には8週間の潰瘍治療を行う.除菌治療後の早期に生ずる潰瘍再燃を予防するために,除菌の判定時まではH2-RAなどによる胃酸分泌抑制薬の投与が必要である.除菌成功例のうち瘢痕期にまで治癒した後は潰瘍の再発がまれであるので,その後の投薬は必要ない.二次除菌療法でも除菌に失敗した場合の治療法については,研究目的での種々のレジメンが検討されているが,現時点では有用性が確立した治療法はない.
ⅲ)除菌治療に伴う副作用:AMPCの副作用として重大なのはアナフィラキシーであり,ペニシリンアレルギーの有無を聴取することは必須である.さらに,頻度が低いものの出血性大腸炎は注意すべき合併症であり,腸内細菌の変化に伴って生ずる軟便と下痢はよくみられるので事前の説明も重要である.一方,CAMは唾液に分泌されるために苦みや味覚異常の出現について説明すべきで,さらに相互作用を有する薬剤が比較的多いために併用薬には注意する必要があり,MNZで注意すべきことは飲酒の禁止と肝機能障害である.除菌治療後に逆流性食道炎またはGERDの症状が出現することが危惧されるが,除菌治療の有用性を妨げるものではないことが判明しており,PPIの投与が一般的に推奨されている. ⅳ)H. pylori陰性または除菌失敗例に対する治療:H. pylori陰性や除菌不成功例および薬剤アレルギーなどによる除菌治療適用外の患者には従来の非除菌潰瘍治療を行う.非除菌治療としてPPIが第一選択薬とされており,PPIを使用できない場合はH2-RAが推奨されている.粘膜防御因子増強薬の単剤投与では酸分泌抑制薬と同等の効果を期待できないことから単剤での使用は勧められず,ガイドラインではPPIと防御因子増強薬との併用療法に関しても,PPI単剤投与を上回る成績はないために推奨していない. ⅴ)再発予防のための維持療法:H. pylori陽性潰瘍治癒後の維持療法に関しては,除菌成功例における維持療法の有効性を示すエビデンスはなく,除菌成功と潰瘍治癒の確認後には維持療法は不要とされている.非除菌治療により潰瘍が治癒した後は再発抑制を目的として維持療法を行うことが推奨されている.維持療法の有効性について,H2-RAとスクラルファートおよびPPIが推奨されているが,PPIは保険適用となっていない.[上村直実]
■文献
消化性潰瘍診療ガイドライン委員会:消化性潰瘍診療ガイドライン.日本消化器病学会編,南江堂,東京,2009.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
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消化性潰瘍(胃・十二指腸潰瘍)
しょうかせいかいよう(い・じゅうにしちょうかいよう)
Peptic ulcer (Gastroduodenal ulcer)
(子どもの病気)
消化性潰瘍とは、何らかの原因で胃・十二指腸の粘膜が深く損傷した状態になっていることをいいます。近年、子どもの領域でも内視鏡検査が普及してきたことにより、確定診断されるケースが少なくありません。
また、ヘリコバクター・ピロリ(以下、ピロリ菌)感染が、消化性潰瘍の一因であることがわかってきています。胃潰瘍の多くはピロリ菌陰性の急性潰瘍で6歳以下に、十二指腸潰瘍の多くはピロリ菌陽性の慢性潰瘍で10歳以上に多い傾向があります。
原因はピロリ菌陽性と陰性によって2つに分けられます。陽性例では、ピロリ菌の持続感染による潰瘍であり、陰性例では、ストレス性、鎮痛薬やステロイド薬による薬物性、好酸球性胃腸炎、メネトリエ病のほかに、クローン病、非常にまれですがゾリンジャー・エリスン症候群などが原因として考えられます。
胃潰瘍は急性潰瘍が多く、突然症状が現れます。それ以外は胃潰瘍、十二指腸潰瘍とも類似の症状を示し、両者の区別は症状だけからは困難です。両者とも腹痛、吐き気、嘔吐、吐血やタール便を伴います。乳幼児では大量吐血をしたり、腸に孔があき(腸管穿孔)、緊急手術になることもあります。
一般に十二指腸潰瘍は、空腹時の腹痛を訴えますが、食事をとると軽減します。多くはみぞおち周囲からやや右よりを痛がります。嘔吐や貧血を伴うこともあります。
前記の症状から消化性潰瘍が強く疑われる場合は、上部消化管内視鏡検査が極めて有用ですが、子どもの内視鏡が可能な施設は限られているのが現状です。造影検査も行われますが、子どもの潰瘍は浅く、診断がつかないことがあります。
ピロリ菌感染の検索は、内視鏡で採取した粘膜の病理組織検査、培養などのほかに、血清抗体や尿素呼気試験の結果を用いて診断します。
出血がひどい場合は緊急内視鏡で止血し、必要であれば輸血をします。内視鏡的に止血が困難な場合や腸管穿孔を来した場合は、外科手術の適応となります。そのような合併症がなければ、予後は良好です。
治療の中心は、酸分泌抑制薬(H2ブロッカーなど)です。ピロリ菌が陽性であった場合は、再発を防ぐ目的で、3種類の内服薬による除菌療法を行うことがあります。近年は薬剤耐性をもつピロリ菌も増えてきており、治療開始前に内視鏡検査を行って治療薬を決定することが必要です。20%程度に下痢や味覚異常などの副作用があり、治療が不完全だとその後の除菌が困難になるため、専門医による治療が必要です。
5歳以上の子どもでは、除菌成功後の潰瘍再発率は2~3%と、ほとんどありません。
胃・十二指腸潰瘍というと、成人の病気という先入観がありますが、新生児から思春期までのどの年齢層でも起こりえます。吐血やタール便がみられたらもちろんのこと、腹痛が続く場合も小児科医の診察を受けることが必要です。
春名 英典
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
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消化性潰瘍 (しょうかせいかいよう)
peptic ulcer
胃液の消化作用がおもな原因となって発生する潰瘍をいう。発生部位は胃および十二指腸で,消化性胃潰瘍,消化性十二指腸潰瘍と呼ぶ。両者を併せ,単に消化性潰瘍とも呼ばれている。1879年クビンケH.I. Quinkeの提唱した名称。胃液の分泌がない場合や胃酸が中和される部位(小腸や大腸)には消化性潰瘍はない。発生原因が明確な結核性潰瘍,梅毒性潰瘍,癌性潰瘍などは,胃や十二指腸に発生しても特殊潰瘍として消化性潰瘍から区別されている。
→胃潰瘍 →十二指腸潰瘍
執筆者:小越 和栄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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消化性潰瘍
しょうかせいかいよう
peptic ulcer
胃液中の塩酸やペプシンの増加,胃粘膜の防御因子の低下などによって胃と十二指腸の粘膜が侵され,潰瘍が形成されるもので,胃潰瘍と十二指腸潰瘍が含まれる。自己消化がその第一原因と考えられることから,この名がつけられた。胃痛,ことにみぞおちと背中に放散する痛み,吐き気などの自覚症状と,便中の潜血,造影剤によるX線写真,胃カメラの検査などにより診断を確定する。軽ければ制酸剤など,また程度に応じては各種トランキライザを投与するほか,手術を必要とすることもある。原因は各種ストレス,ことに感情ストレスの影響が強いという意見が多い。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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消化性潰瘍
しょうかせいかいよう
peptic ulcer
胃液にさらされている範囲内の消化管壁の組織の欠損で、一般には胃潰瘍と十二指腸潰瘍をいう。
[高橋 淳]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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消化性潰瘍
自らの消化酵素によって自らの消化管の一部である上皮などが消化されて生じる潰瘍.
出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報
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世界大百科事典(旧版)内の消化性潰瘍の言及
【胃潰瘍】より
…胃壁の欠損が表面の粘膜にとどまるものを糜爛(びらん)と呼び,粘膜下層より深い組織欠損を潰瘍と呼んで区別することが多い。大部分の潰瘍は,なんらかの原因によって胃の組織が胃液の酸やペプシンに消化されて生じるもので,消化性潰瘍とも呼ばれている。これに反して,癌,結核,梅毒などの病変が胃にあり,明らかな原因によって生じるものを特殊胃潰瘍として消化性潰瘍と区別している。…
※「消化性潰瘍」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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