エリソン(その他表記)Ralph Ellison

デジタル大辞泉 「エリソン」の意味・読み・例文・類語

エリソン(Ralph Ellison)

[1914~1994]米国黒人小説家。小説「見えない人間」は、黒人という存在白人の目には見えないものとして描き出した。他に人種問題などを論じた評論集「影と行為」など。

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改訂新版 世界大百科事典 「エリソン」の意味・わかりやすい解説

エリソン
Ralph Ellison
生没年:1914-94

ライト,ボールドウィンとならぶアメリカ黒人文学界重鎮オクラホマ州の出身で,はじめ音楽家を志したが,1937年ニューヨークでライトと知り合ったのが作家になる機縁となったといわれる。作品としては十数編の短編小説,すぐれた評論集《影と行為》(1964)のほかに,代表作長編小説《見えない人間》(1952)があるだけである。だが今やアメリカの古典の一つともいうべきこの大作によって,世界の文学界でのその地位は不動のものとなっている。《見えない人間》は1人の黒人青年を主人公に,アメリカ南部・北部社会の人種差別様態を奴隷制以来の歴史の奥行きをもたせながら展開し,さらに現代の社会政治機構のなかにおける黒人の存在の意味を問いつめたものである。新しい手法を駆使した実験小説,すぐれた歴史小説としての面をもち,ライトの自然主義をこえたリアリズム小説の傑作といわれる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「エリソン」の意味・わかりやすい解説

エリソン
えりそん
Ralph Ellison
(1914―1994)

アメリカの黒人作家。オクラホマ州オクラホマ・シティ生まれ。タスキーギー学院に進んで音楽の勉強をしたあと、ニューヨークに渡り、アメリカ黒人の抗議文学を代表する黒人作家R・ライトと知り合い、また共産党と関係をもつようになって作家生活に入った。代表作は長編小説『見えない人間』(1952)。これは、正体をもたないことがアメリカ黒人の正体であるとするユニークな認識を通じて、アメリカ黒人の自由の可能性を模索した作品といえるが、そのような認識に至る過程を、アメリカ黒人がアメリカ社会のなかで見えない存在となっていく苦しみとして描き出している。ほかに評論集『影と行為』(1964)などがある。

[齊藤忠利]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エリソン」の意味・わかりやすい解説

エリソン
Ellison, Ralph

[生]1914.3.1. オクラホマ,オクラホマシティー
[没]1994.4.16. ニューヨーク,ニューヨーク
アメリカ合衆国の黒人小説家。フルネーム Ralph Waldo Ellison。生地の公立学校卒業後,州の奨学金を得てアラバマ州の黒人向け職業学校タスキーギ工業師範学校で音楽を専攻。作曲家になるつもりでニューヨークに出たが,ここで黒人作家リチャード・ライトを知り,その勧めで小説の執筆を始めた。1952年,7年の歳月をかけて完成した長編『見えない人間』Invisible Manを発表し,全米図書賞を受賞。この作品は,黒人のアイデンティティ喪失を象徴的に描いたもので,第2次世界大戦後のアメリカ小説を代表する作品の一つに数えられる。その後は各地の大学の講師をしたり,種々の雑誌に寄稿。評論集『影と行為』Shadow and Act(1964)などがある。

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百科事典マイペディア 「エリソン」の意味・わかりやすい解説

エリソン

米国のアフリカ系作家。オクラホマ出身。作曲家を志したが文学に転じ,人間的希望を果たし得ない黒人の運命を表現主義風に描いた長編《見えない人間》(1952年)は高く評価された。人種問題その他を扱った評論集《影と行為》(1964年)もある。

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