日本大百科全書(ニッポニカ) 「タイパン」の意味・わかりやすい解説
タイパン
たいぱん
taipan
[学] Oxyuranus scutellatus
爬虫(はちゅう)綱有鱗(ゆうりん)目コブラ科のヘビ。同科タイパン亜科に属し、世界でもっとも危険な毒ヘビの一つとされる。オーストラリアのクイーンズランド州北東部およびメルビル島を含むアーネム・ランドに分布し、パプア・ニューギニア南部には亜種のパプアタイパンO. s. canniが分布する。大形で全長2~3.6メートル。頭部は大きくて長く、頸部(けいぶ)がくびれる。胴は細長く、体鱗には顕著な隆条があって背中線上の体鱗列が隆起する。平地から山地の森林に生息し個体数は多くないが、毒腺(どくせん)、毒牙(どくが)ともに大きく、きわめて危険。昼行性であるが、暖かい夜にも行動する。あらかじめ危険を察知すると退避するが、脅かされると攻撃してくる。行動が敏捷(びんしょう)で1回の攻撃で数か所にかみつく。毒性はタイガースネークNotechis scutatusと同じほど強く、主成分は神経毒で、毒ヘビ中もっとも強い毒の一つとされる。毒量が多く、たとえば長さ2メートルの個体から、マウス2万3000匹を殺す分量にあたる平均100グラムが採毒される。本種による咬症(こうしょう)は、血清治療なしでは致命的とされる。
[松井孝爾]