知恵蔵 「タイ代理出産騒動」の解説
タイ代理出産騒動
この不可解な事件にタイ警察も捜査に乗り出したが、人身売買などの犯罪性は確認できなかった。しかしこれをきっかけに、タイ国内では母子の人権擁護や倫理の観点などから、商業目的の代理出産の是非を問う議論も起こった。医療水準が高く、代理出産を規制する法律がないタイでは、数年前から外国人カップルを対象とした「代理出産ビジネス」が公然と行われてきた。タイ国民の間でも、不妊に悩む夫婦への福音として、代理出産を含む生殖補助医療への道義的抵抗は小さいともいわれる。しかし、この問題が発覚した同時期(14年8月)、タイ人代理母が出産したダウン症の子の引き取りを、依頼主のオーストラリア人夫婦が拒否したという疑惑が浮上し、国内外で代理出産への関心が高まっていた。現在(14年9月末時点)、タイ軍事政権は先進国並みの代理出産規制法の制定を進めている。
(大迫秀樹 フリー編集者/2014年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報