たこ足大学(読み)たこあしだいがく(英語表記)“tako-ashi(dispersed campus)” university

大学事典 「たこ足大学」の解説

たこ足大学
たこあしだいがく
“tako-ashi(dispersed campus)” university

第2次世界大戦後の学制改革の中で,連合国軍最高司令官総司令部(GHQ/SCAP)民間情報教育局(CIE)国立大学設置原則に基づき,一府県に一つの国立大学という方針で,旧制の大学,師範学校,専門学校等が再編され,1949年(昭和24)新制の国立大学が発足した。これらの大学は異なる学校を組織的に一括りにしたため,実際の施設設備が離れた場所に分散していることが多く,たこの足のように分岐していることから,しばしば「たこ足大学」と呼ばれた。信州大学など,多くの地方国立大学がこの状態にあった。私立大学でも,マンモス化に伴うキャンパス拡大に当たり,政府による大都市部での大学設置抑制方針等のため,郊外等の遠隔地に敷地を確保したことなどから,施設設備が分散する例がみられた。学内の連絡・移動の困難さは,大学の運営や一体性醸成等の点で障害となった。弊害を緩和するため,学内を結ぶ情報通信ネットワークの構築や,テレビ,eラーニングによる授業等も各大学で試みられた。ただし,地域との交流や地元産業への貢献等の点でキャンパス分散にも利点があったとの指摘もある。

 国立大学では,1960年代から次第にキャンパスの移転統合が進められたほか,2002年(平成14)7月の工場等制限法廃止により,大都市部でのキャンパス拡張が可能となったため,私立大学でも都心回帰がみられたが,国公立大学の法人化に伴う大学統合日本)により新たなキャンパス分散も生じている。
著者: 寺倉憲一

出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報