大気海洋相互作用によって、インド洋とその周辺域に現れる現象。インド洋ダイポールとも称され、英文のIndian Ocean Dipole(mode)の略称としてIODともいう。通常のダイポールモード現象では、赤道域インド洋南東部で海水温が平年より低くなり、赤道域インド洋西部では海水温が平年より高くなる。太平洋のエルニーニョ現象と類似の現象であるが、エルニーニョ現象とは関係なく独立して発生する場合と、エルニーニョ現象と関連して発生する場合とがある。インド洋東部熱帯域で南東貿易風が強まると、東風によって高温の海水が西側へ移動、また深海からの冷たい湧昇(ゆうしょう)や海面からの蒸発によって海水温が低下する。一方、インド洋西部では、東から運ばれた高温の海水で海面水温がさらに上昇する。海面水温が高くなると、そこでは対流活動が活発化し、降水量が増加する。この現象について、1999年(平成11)に山形俊夫(当時東京大学教授)らが発表、「インド洋ダイポール」と命名した。ダイポールとは「双極」の意味で、海面水温などさまざまな海洋気象観測のデータや構造に、インド洋の東西で双極的、対照的な現象が現れることに由来する。
ダイポールモード現象の発達は、インドから日本にかけてのモンスーンアジア地帯の気象に大きく影響し、これらの地域で干魃(かんばつ)や猛暑といった異常気象を引き起こすと考えられている。
[饒村 曜]
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