改訂新版 世界大百科事典 「ダモーダル川」の意味・わかりやすい解説
ダモーダル[川]
Dāmodar
インド,ビハール州のチョタ・ナーグプル高原に発し,東流してコルカタ(旧カルカッタ)の南方48kmでガンガー(ガンジス)川の分流フーグリ川に合流してベンガル湾に注ぐ。全長541km,流域面積1万2000km2。インド亜大陸のなかでは小規模の部類に属するが,1948年に始まるダモーダル河谷総合開発Dāmodar Valley Corporation(DVC)によってよく知られる。元来この流域の荒廃はひどく,モンスーン期には激しい土壌の流亡と大水害が頻発し,〈悲劇の川〉ともいわれていた。一方,流域には銅,鉄,ボーキサイト,石炭,石灰石等,多種かつ豊富な鉱物資源が埋蔵され,ターターなどの国内大企業から注目されていた。DVCは,流域内の農業基盤の安定と鉱工業の発展を目的として流域を総合的に開発しようとするものであった。アメリカ合衆国のTVAを見習った計画であり,その主要事業は多目的ダム,灌漑水路,発電・送電施設の建設であった。計画された四つのダム(ティライヤ,コーナール,マイトン,パーンチェット・ヒル)が完成し,そこから放流される水はドゥルガプル貯水湖で第2次調節のうえ,南北両岸の幹線水路へ分水され,下流のバルドマン,バンクラ地方の米作の拡大と安定化に貢献した。発電所は水力1万4000kWのほか,火力106万1000kWが建設された。アサンソールはダモーダル工業地域の拠点都市で,近郊に鉄鋼・機械工業が立地し,新興工業都市のダモーダルには国営製鉄製鋼所や肥料工場などが集積する。
執筆者:藤原 健蔵
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報