日本大百科全書(ニッポニカ) 「チヒロザメ」の意味・わかりやすい解説
チヒロザメ
ちひろざめ / 千尋鮫
軟骨魚綱メジロザメ目の科や属の総称、またはその1種の名称。チヒロザメ科Pseudotriakidae(英名false catsharks)は3属5種からなる。そのうち、チヒロザメ属PseudotriakisはチヒロザメP. microdon(英名false catshark)の1属1種で、口が非常に大きく、上下両顎(りょうがく)の歯が小さくて200列以上あること、第1背びれの基底が非常に長く、胸びれ直後から始まり、腹びれ付近で終わること、第2背びれが臀(しり)びれの上にあり、大きいことなどが特徴である。雑食性で、魚類、甲殻類、イカ・タコ類などいろいろな餌(えさ)を食べる。水深100~2500メートルの大陸棚や大陸斜面にすむ。生殖方法は食卵型の胎生であるが、ネズミザメ目でみられる食卵型胎生とは違う方式をとる。チヒロザメの場合には、一つの卵殻に数多くの小形卵が含まれ、そのなかの一つが受精卵で、そのまま発生を開始し、ある程度の大きさになると同じ卵殻内の小形栄養卵を食べ、自分の外卵黄嚢(のう)に蓄えて、その後の発生に利用する。胎仔(たいし)数は少なく一度に1~4尾である。最大で3メートルほどになる。中部・西部太平洋、インド洋、北大西洋などに分布する。国際自然保護連合(IUCN)のレッド・リストでは、低懸念(LC)とされている(2021年9月時点)。
[仲谷一宏 2021年10月20日]