日本大百科全書(ニッポニカ) 「チンアナゴ」の意味・わかりやすい解説
チンアナゴ
ちんあなご / 狆穴子
spotted garden eel
[学] Heteroconger hassi
硬骨魚綱ウナギ目アナゴ科チンアナゴ亜科に属する海水魚。静岡県富戸(ふと)、高知県柏島(かしわじま)付近の太平洋沿岸、屋久島(やくしま)、南西諸島、小笠原(おがさわら)諸島、台湾南部、フィリピン、マダガスカルなどのインド洋・太平洋に広く分布する。いわゆるガーデンイールの一種。左右の上唇の遊離縁は吻端(ふんたん)でつながり、前鼻孔(ぜんびこう)と感覚孔は遊離縁上に開くことでチンアナゴ属に属し、シンジュアナゴ属と明瞭(めいりょう)に区別できる。体はきわめて細長い。肛門(こうもん)は全長の前38~41%付近に開く。頭は小さく、肛門前長(吻端から肛門までの長さ)のおよそ14~17%。上下両顎(りょうがく)の歯は広い歯帯で、上顎の後端部のものはいくぶん大きい。鋤骨歯(じょこつし)(頭蓋(とうがい)床の最前端の骨にある歯)は前上顎骨歯とつながり、後方に向かって狭くなる歯帯を形成する。全側線孔数は158~172個で、そのうち、肛門よりも前に59~64個が開く。背びれは鰓孔(さいこう)のすこし前から始まる。胸びれは小さく、頭長の6.2~9.1%。体の前3分の1は全体に灰色~紫褐色で、腹方と尾部ではより淡い。体全体に丸い暗色斑(はん)が狭い間隔で規則的に配列するが、この斑点が連結する個体もある。鰓域は淡褐色。背びれと臀(しり)びれは一様に透明で、斑紋がない。眼径より大きく、よく目だつ3個の黒色斑紋があり、最前のものは鰓孔と胸びれを取り囲み、2番目のものは躯幹(くかん)部(胴部)の中ほどに、最後のものは肛門を取り囲む。稚魚では体は全体に黒くて、本種の特徴的な三つの黒斑は目だたない。最大全長は約40センチメートル。水深7~50メートルのサンゴ礁近くのサンゴ砂中に潜り、体の前半分ほどを出して水流に向かい流れてくるプランクトンなどを食べる。通常はコロニーを形成し、数百個体が見られることもある。ダイバーによってよく観察・撮影され、体の特徴的な斑紋によって容易に他種と区別できる。
[尼岡邦夫 2019年11月20日]