ツノトンボ(その他表記)owl fly

改訂新版 世界大百科事典 「ツノトンボ」の意味・わかりやすい解説

ツノトンボ (長角蜻蛉)
owl fly

脈翅目ツノトンボAscalaphidaeに属する昆虫総称,またはそのうちの1種を指す。この仲間は一般に大型で翅の開張3.5~11cm。名のとおり一見トンボのようであるが,長い触角があり,分類学上互いにまったく異なるグループに属する。熱帯から温帯に広く分布し約300種が知られ,日本には4種が産し5月から9月にかけて草地や林縁部に発生する。キバネツノトンボAscalaphus ramburiのように,しばしば昼間活動し,かなりすばやく飛ぶ。飼育例では寿命は3ヵ月に達するという。卵は灰色ないし黄褐色で,長楕円形に近く長径2mm前後。草や低木の茎や小枝などに軸に沿って数十卵を規則的に産みつける。幼虫は地面や樹皮上で背景に擬態して小昆虫を捕食し,成熟幼虫は2cm前後におよび,繭を地上に形成する。生育は順調であれば1年以内に完了するが,餌が不足すると2年以上を要する。ツノトンボHybris subjacensは,翅の開張6.5~8cm。胸部背面に黄帯がある。本州四国,九州,朝鮮半島,中国,台湾に分布する。夜間活動し,イネ科雑草の茎や葉に40~60卵を2列に並べて産卵する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツノトンボ」の意味・わかりやすい解説

ツノトンボ
つのとんぼ / 角蜻蛉
[学] Hybris subjacens

昆虫綱脈翅(みゃくし)目ツノトンボ科に属する昆虫。4枚の透明なはねは一見トンボのはねを思わせ、触角はたいへん長く、先端が膨らんで、ちょうどチョウの触角のようにみえる。体長35ミリメートル内外、前翅長30ミリメートル内外。体は細長く黒ないし黒褐色で、背部は縦に黄褐色の条(すじ)が走る。胸側にも黄色の斜条がある。はねは透明、前縁端部に縁紋がある。雄は腹端には太い2本の内曲した付属物をもつ。成虫は初夏より初秋までみられ、乾燥した草原に普通にすむ。昼間、カなどの小昆虫を捕食するが、飛び方はあまり速くない。幼虫は草上で、ほかの昆虫を捕食する。本州、四国、九州、および朝鮮半島、中国、台湾に分布する。

 ツノトンボ科Ascalaphidaeの昆虫は温帯から熱帯にかけて多いが、世界各地に分布し、200種以上が知られている。日本では前記の種のほかキバネツノトンボAscalaphus ramburiなど4種が知られている。いずれも前記の種に似た体形をもち、幼虫はアリジゴク型、肉食性で草の根際などにいる。なお、ツノトンボ科はウスバカゲロウ上科に含まれ、ウスバカゲロウ類が近縁群である。

[山崎柄根]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ツノトンボ」の意味・わかりやすい解説

ツノトンボ
Hybris subjacens

脈翅目ツノトンボ科。体長 35mm,前翅長 30mm内外。体は赤褐色で,頭部,胸部に同色の毛が密生する。胸背から腹背へ幅広い黄色の縦条があり,また胸側には黄色の幅広い斜条がある。腹側部は黒色。翅は透明で細長く,多くの脈があり,後翅は前翅よりやや短くて狭い。触角は非常に長く,先端は急に太まり,扁平。成虫は夏に出現し,草原にみられる。本州,四国,九州,朝鮮,台湾,中国に分布する。なおツノトンボ科 Ascalaphidaeは,日本に4種を産し,一見トンボ目のものに似るが,分類学的には脈翅目ウスバカゲロウ上科に属する。 (→脈翅類 )  

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小学館の図鑑NEO[新版]昆虫 「ツノトンボ」の解説

ツノトンボ
学名:Hybris subjacens

種名 / ツノトンボ
解説 / トンボに似ていますが、触角がとても長く、複眼はみぞにより2つの部分に分かれています。幼虫はアリジゴク(ウスバカゲロウの幼虫)に似ていて、草むらや石の下にすみます。
目名科名 / アミメカゲロウ目|ツノトンボ科
体の大きさ / (前ばねの長さ)37~40mm
分布 / 本州、四国、九州
成虫出現期 / 5~9月
幼虫の食べ物 / ほかの昆虫など

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百科事典マイペディア 「ツノトンボ」の意味・わかりやすい解説

ツノトンボ

脈翅(みやくし)類ツノトンボ科の昆虫の1種。開張75mm内外,暗褐色で黄褐色の斑紋がある。長い触角は先端が太く,一見チョウに似る。北海道以外の日本各地,朝鮮,中国,台湾に分布。夏に現れ乾燥した草地に多い。幼虫は草むらで他の小昆虫を捕食する。ツノトンボ科はよくトンボ類と誤られるが,完全変態をし,幼虫は陸生,むしろウスバカゲロウ類に近い。主として熱帯地方に200余種が知られ,日本には数種ある。

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